悠久の丘で
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13 血も涙も垂れ流して、それでも気づかずに、前に進もうとした

 『カク、パウリー』
 名前を呼べばすぐに笑んでくれる人がいた。
 捨てられ残され何もなくなったような俺に暖かい手を差し伸べてくれて、抱きしめてくれて、泣いてくれる人。

「…ッくそ」

 体中がベタベタする。カラダが重いし何故か身体中が痛いし。
 小さく言葉を吐き捨てて、纏わり付くようなもう布切れとしか呼べないような服を剥いだ。

 肌に直接触れる冷えた空気。火薬の匂いと血の匂いと埃の匂いと水の匂い。

 甲高い音をさせて引き裂いた布切れの代わりにそこら辺に転がってる人間のコートを剥ぎ取って身に付けた。
 黒の細身のコートが何故だかいなくなってしまった人を思い出して泣きそうになった。

 優しく笑ってくれた人。
 抱きしめてくれた人。
 探してくれた人。
 撫でてくれた人。
 …怒ってくれた人。

  ――― そして、今消えようとしている人。

 当てはまるのは1人だ。
 途中までは浮かぶ顔が2つ。でも最後で絞られる。

「行かせてたまるか」

 それが全て自分の我儘だなんて知ってる。彼は本当は俺が嫌いだったのかもしれない。
 5年間、ずっと傍にいてくれたけれども、本当は嫌いだったのかもしれない。
 両親には5年で捨てられた。
 嫌になる位5年ごとにナニかある。


 最初の年は両親に捨てられた
  ―― 親父に拾われた

 次の年は親父が殺された
  ―― パウリーとカクが救ってくれた


 そして今年は―――…


「行かせてたまるか」
 ――あんな世界の端っこに
 もう1度呟いた。

「クリス!」
「…ぁ、フランキーのトコの」
 名前を覚えていなかったから分かる範囲で言ったら相手はふと笑って、それから顔を引き締め指を指した。
 その先には高い塔がある。
 今いるこの位置より後ろにはパウリーが。

「兄貴も麦わらもあっちのはずだ、行くんだろう?」
「あぁ、勿論」

 握った刀の柄を握り締めて。
 固く頷けばソイツは笑った。

「なら早く行け、止めたって無駄なんだろう」


 何であの人が離れたのかわからない。
 何故あの人が離れるとき、泣いていたのか分からない。

 だけれどもその涙を信じて良いのなら――…


「…俺は迎えに行かなきゃ」
 笑んだらソイツは肩をすくめた。

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