企画参加 | ナノ




 ちょいちょいと後ろ髪を指で弾いたり巻き付けたりして遊んでいれば、はてなマークを顔に貼り付けて振り向いてきた。
それにへらりと笑い返し、またくるくると髪の中で指を回す。


「髪伸びたんじゃね? 暑くないの?」

「……」


 名前の言葉に少し天井を仰いで、こてん、と首を傾げる。
まぁ自分じゃ分からないだろう。
そんな小太郎の様子に苦笑し、ベッドのスプリングをきかせてピョンと跳ね起きた。


「よっし、名前さんが切って差し上げよう」

「…」


 えー? とでも言いたげな表情の小太郎を背中を叩いて急かし、ハサミとゴミ袋を用意した。
袋を切り開いて広げその上に小太郎を座らせれば簡易理容室の出来上がりだ、免許も許可も無いが。


「お客さん、今日はどんな感じで?」


 ふざけて肩に小指を立ててバスタオルをかけながらそんな事を言えば、キレのある裏拳が飛んできたので自重することにする。

 ちょきちょき、パサパサ。
ハサミの音と下に髪が落ちる音が不規則にし、後ろの髪が心なしか涼しくなった頃に前髪へと移行した。
「よっ、やってる?」と暖簾のように長い前髪を分ければ、随分頭のかわいそうな子を見る目とかち合う。
すいません。
心の中でそう謝って、本人の意向により前髪はあまり切らずにおいた。


「はいスッキリー」


 ぺぺぺと髪を手で払っていればいきなりぐわしっ! と効果音がつきそうな勢いで頭を掴まれた。
そしてぐりんっと一回転して立ち位置が入れ替わり、気付けば名前は小太郎のいた位置、小太郎は名前のいた位置に収まっている。
あらー? なんて思っているうちにバスタオルは肩にかけられ、あっという間にショキショキ耳元で鳴るハサミの音。
もともとそんなに髪が長いほうではないが、小太郎の手際の良さも相まってすぐに散髪は終わる。
鏡に映るは気持ちスッキリした頭の非リア充二人という、何だか悲しいものだった。


「ずいぶんスッキリしたねぇ」


 自分の頭をわしゃわしゃかき混ぜ、ついでに小太郎の頭もわしゃわしゃかき混ぜる。
抵抗するでもなく、気持ち良さげに目を細めたので「よーしよしよし」とムツゴロウさんを気取ったらさすがに絞め技を喰らいました。

 そうして二人合わせるでもなく、なんだかここまでさっぱりしたのがもったいなくて外へと繰り出す。
外はじっとり暑いが前までよりは涼しく感じた。祭りの会場についたら同級生の猿飛佐助が偶然にも正面からやってきて、来ないと思ってたうんぬんを言ったあと、ちょっと首を傾げた。


「髪切った?」

「タモさんか」


 二人で少しふき出して、どうやら他にも来ているらしい友人達がいる所へ案内する佐助の尻を、交互に入れ替わり蹴りながら歩いていく。



 好きだ、と言ったらどうなるんだろうかと、視界に入る短くなった後ろ髪を見てぼんやり思った。




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