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 どん、どどん。
ぴーひゃらら。
ひゅるるるるる、…どんっ。

 とかなんとか、太鼓と笛の音色、花火のあがる音がする。
まぁどちらもわりと近所でやっているせいだが、そんな近くで開催されているにも関わらず、自分達は自堕落に部屋に閉じこもりマンガを読んでいた。
せめてつけられたテレビの花火大会中継はもはやBGMと化し、色とりどりに散る火薬はその事実になんとも寂しげに見えた。

 もう高校生活も少なくなり、通常ならば進路のために走り回り、最後の思い出つくりに励み、恋人がいれば下世話だがひと夏の思い出をそういう意味で励むものだろう。
少なくとも同級生の前田慶次はそうだ。
ただし自分達、名前と友人である風魔小太郎はどうもそういう物に一等、興味がないらしい。
進路はどちらも家業を継ぐし、最後の思い出もとくに欲しくない。
唯一悔やまれることは恋人がいないことぐらいだ。

 自分の恋人が出来ない理由はなんとなく分かる。
不細工、ではないにせよパッとしない顔立ちだし、社交性も正直欠けている。
以前、善意のつもりで女子に下着が透けていることを伝えたらものの見事に大バッシングを喰らった。
男子には勇者と讃えられたが嬉しくない。
落ち込みはしたが、まぁいいかと思ってしまう辺りもダメなんだろう。

 対して、友人の小太郎は彼女が出来ないことが不思議でならない。
仕事は早いし、運動も出来る。体格もとてもいいが、なぜか新聞部に入っている。
顔はあまり周りに見せないが、以前ちらりと見た顔は男前だった。
後輩で学校のアイドル、鶴姫ちゃんとやらが小太郎にアタックしているのも何度も見た。
けれどこれだけ長くいて彼女の影など見たことが無いし、本人に聞いてもいないという。

(まぁたしかに無表情だし、喋らないけど)

 もったいないなぁ、と読み終わった漫画を置き、視線の延長線上にある赤い頭を眺めた。
少年漫画を読んでいた自分とは違い、妹の部屋にあったコッテコテの少女漫画を読んでいる小太郎。
こんだけガタイが良くて少女漫画、そのギャップはなんだか可愛いらしいと思う。


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