06



佐助は草村に嘔吐する秀晶を見ながら、かなり、混乱していた。


何退いちゃってんの俺様!
相手が逃げたり反撃して来たら危ないでしょーが、いや、全然反撃して来てないけど、そういうんじゃなくて。
ああもうどうなってんの!?
何でこの人吐いてんの!?
何で血ィ見て吐いてんの!?
何で逃げないの!?
いや逃げて欲しい訳じゃないけどさ!


かつて無い程に混乱していた佐助は、退いた時の体制から1ミリも動いていなかった。

が、いまだ「うぇぇえぇ」と情けない声を出し、苦しそうにするこの男を見て、かすかに保護欲が出て来てしまう。


もともと自分の主の真田幸村も、宴の次の日こんな感じになっている。


いわゆる二日酔いと言う物なのだが、主は「気合いで治る」と豪語し、止める自分の言葉に耳を貸さず、鍛錬を始め、しばらくして真っ白な屍になった状態の幸村を回収する羽目になるし。

大将は大将で城の酒蔵を空にする勢いだし、軍神を呼んで来た日には戦って城を破壊するし、飲み比べを始めるし、結局負けていじけるし、軍神は笑顔で本当に酒蔵を空にしてくれるし、散々だ。

おまけに自分にも飲めと絡んでくるから、本っ当に最悪だ。


ある日の…もとい、ひと月前の出来事を思い出しながら、とりあえず背中をさすってやった。



「っ…すいません、お見苦しいところを…ッッ、おぇええ」


「ああもう喋んなくて良いからさぁ、どうして吐いたワケ? 酒でも飲んだ?」



優しくするふりをして情報を聞き出す、簡単な誘導尋問なのだが、引っ掛かるだろうか。

変態でも、腐ってもあの男は賢い。

どう返してくるか…。



「いえ…血が苦手な物で……ゔっ!」



…そう来たか。

どうやら思い出したらしく、もう一度吐く男。

よく分からない。

が、放って置く訳にも行かない。


さて、どうする?



 


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