05



そんな事を顔に出さず、明智の首に苦無を押し付けたままにしていると、明智はへにゃりとした笑みを浮かべた。


何が可笑し…


「イケメンですねぇ」

「はぁ!?」


こんな時に何言ってんのこの人!

ていうか“いけめん”って何!!


「ふざけてんの、アンタ」

「いえいえ、滅相もない。 本当の事を言ったまでですよ、私は」


本当に格好良いと思ったんです。


また目を優しく細め、ふわりと笑いかけてくる男。


あ、ホント? うわ〜…面と向かって言われると照れるな〜…っじゃなくてッ!!

何してんの俺様! 流されちゃって!!


若干自己嫌悪に襲われた佐助は、目の前の秀晶に違和感を抱く。


明智ってこんな笑い方したっけ?

もっとこう…不気味な…何か企んでいる様な笑みしかしなかった気がするんだけど…。


記憶の中の明智と、目の前の明智を比べてみる佐助は、やはり何か違うと直感が言う。


それはそうだろう、違うんだから。


しかし違うと思ってもそれを決定付ける証拠も無く、殺せば一緒かと決定した佐助は首の苦無に力を込めた。


切れ味の良い苦無は力を込めた途端、すぐ薄皮一枚を斬り、その下の肉を斬れば血がダラリと垂れる。

さすがにそれに気付いた秀晶は、首の血に手を当て、拭った血を見た。


その瞬間、目が開かれ、鼓動の音も息も荒くなる。


それを見た佐助は、血を見て興奮したかと思い、さっさと殺そうと苦無を横に思い切りひく…。

のを、秀晶の手が掴んで阻止した。


「待って下さい…!!」

「っ…!」


その声は酷く真剣味を帯びていて、さっきまでとは打って変わりかなり強い口調だ。

あまりの豹変振りに、佐助も動けなくなる。

なんだこの気迫は。


「今すぐ上から退いて下さい…」

「…ッ退かなかったら…、どうするつもり?」

「退かなければ…」


秀晶は手を口に当て、一旦区切る。


若干、顔色が悪いような…。



「吐きます」


「嘘だろぉぉぉぉおおっ!!?」



うぷ、という音がして、佐助は飛び退いた。


 


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