03


「…さて…一体ここはどこなんでしょうかねぇ」



森の中、秀晶は首を傾げる。


今まで自分の居た場所は、緑が限り無く少ない都会だったはずなのだが。

今では限り無く…というか、ほぼ視界に入る全てが緑一色。

コンクリートの灰色の面影もガラスのキラキラとした反射も、車の走行音も無い。

今聞こえているのは風に吹かれて揺れる枝葉の音と、鳥の鳴き声ぐらいだ。


「困りましたね…、私は急いでいるのですが…」


そう呟きながら、手に握っているコンビニの袋を目をやる。

中身ですか? アイスです。
カップで、なかなか良いお値段のアイスです。


(妹から頼まれた物だから、溶けると非常に困るんですよねぇ)


これは連絡した方が良いかも知れない、と携帯を取り出す為にジャケットの内ポケットに手を突っ込んだ瞬間、視界が暗転し背中に衝撃が走った。

今息が詰まりましたねぇ、凄く。


「アハー、なぁんでこんな所に尾張の変態が居るわけ?」


壮絶な笑みを浮かべながら、自らの身体の上に馬乗りになって首に何か冷たい物を当ててくるこの男。

秀晶は、私はこの人に転ばされたのでしょうか、なんて気楽に思いながら目の前の男の顔を目をぱちくりとさせ、凝視している。


「…イケメンですねぇ」

「はぁ!?」


そう言ってへにゃりと笑った秀晶の目に、男の困惑は映っていなかった。


 


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