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「うん、まぁ…、そんなことだろうと思ってたけどな…!」


 言い終わるや否や、手の平にグーパンチをかまし、さてどうしてくれようかと瞳孔の開ききった目をして指をポキポキ鳴らす佐助を下忍三人がかりで宥める。
報告した忍は可哀想なことに、あまりの怖さに既に足元で縮こまっていた。
無論、報告の内容は秀晶がどこかに行ってしまったという内容だったが、それを言えば佐助が怒り狂うことは目に見えていた為、誰がそれを佐助に言うかでだいぶ押し付け合い一番新入りの忍が押し付けられていた。
そして……案の定、こうなった。

 腰の抜けた新入りを外に引きずり出し、くノ一に介抱させておく。
まぁまぁまぁと宥められ、自分達がなんとか見付けてきますから、隊長はお館様達を頼みますと言って慌ただしく旅立つ部下達を見送り、佐助は腕を組み直した。
そして、大きな大きな、今日何度目か分からないため息をついて壁にベッタリともたれる。


「あぁぁもぉおっ…、俺様もうイヤ……!」


 顔を覆い、さめざめと震える武田きっての忍の姿に、広間に居る武将のほとんどが同情ともらい泣きを同時に貰っていた時、失礼いたしますと女中頭の手によって襖が開けられ、女中達が出来上がった料理を運び入れる。
さすがに情けない姿をこれ以上の人間に見せる訳にもいかないと佐助も姿勢を正し、ピシリと佇まいを直した。
醤油や味噌の香りと共に運ばれる膳が、まずは上座に座る信玄、次に幸村、順繰りに運ばれてくる。


「どうぞ、信玄公、お持ちいたしましたよ」

「うむ、今日の夕餉も美味そうな香りがしておるわ」


 …あれ。
なんか、いた。


「秀晶殿ッ!? 何をしておられるのでござるか?」

「居候の身ですから、お手伝いをさせて頂いております。さぁさぁ真田殿もたんと召し上がってくださいね」

「かたじけのうござる!!」


 最後の盛り付けだけは私も手伝ったのですよ、んふふふふ、と、邪魔で縛られたであろう後ろ髪を揺らしながら身体をくねらせ笑う秀晶を、佐助と、広間に居た武将達はどうにも説明出来ない表情で見入っていた。
共通しているのは「え、なにアレ?」だろう。

 そしてたぶん、「気持ち悪い」だ。


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