43「何なのホントに鬱陶しい超鬱陶しい何でいちいち笑うの踊るの気持ち悪いのどんだけ気持ち悪かったら気が済むの気持ち悪いの象徴なの根元なの何なのホントあれ何なの」 だしだしと畳にクナイの持ち手を叩き付けながら、頭を抱え、四つん這いになって打ちひしがれている姿はさぞ滑稽だろうと自分でも分かっていたが、どうしようもない。 仕方ない。 あれは仕方ない。 持っていった着物に素直に喜ばれ、素直に礼を言われ、少なからずあれは嬉しかったのは事実だ。 幸村や信玄ももちろん礼を言ってくれるが、幸村は気持ちが込もってはいるが義務的に、反射で言っている訳で。 信玄もその類いだ。 およそ、人の上に立つ者の感謝の方法。 忍風情に礼を言ってくれる事すら身に余る光栄だが、やはり違う。 けれど秀晶は。 生まれついた性格か世代か立ち位置か、目線が同じなのだ。 同じ場所から、同じ目の高さで軽口を叩いて言えるのだ。 それはまるで友人のように、そう言うから、くすぐったくなってしまった。 誰も見ていない所を掬い上げて褒めるから、照れ臭くなってしまった。 仕方ない。 そんなもの、知らなかったのだから仕方ない。 誰も見てはくれなかったのだから、仕方ない。 「ハァ…」 何度目か分からないため息を吐いて、さてそろそろ自分も行かねばと障子を開けた佐助の目に飛び込んで来たのは、ある意味予想通りの光景だった。 「立派な楓ですねぇ…秋が楽しみです」 なでなでと、いやにしっとりした手つきで木を撫でる秀晶。 何も草鞋等を履いていない秀晶。 足は足袋の秀晶。 一歩踏み出す佐助。 手にはお盆の佐助。 思い切りお盆で秀晶の頭を殴る佐助。 パッコー――ンと響くお盆と頭蓋骨と城内。 何だか風流ですねと和む城内。 鹿威しなんてあったっけと悩む城内。 ああやっちまったなー、と一部始終を見ていた忍達。 そんな周りは置いといて。 「なにやってんの?」 佐助は静かに秀晶の胸ぐらを掴んで、そう言い放った。 (43/48) 前へ* 目次 #次へ栞を挟む |