38そう言って幸村の隣の部屋を使う気満々の二人に、何でこうも危機感というか、警戒心というものが二人には薄っぺらなのかと佐助は頭を抱える。 一応二人は日の本の名だたる戦国武将であるはずなのに、さすがにここまで警戒心が薄いとそれが嘘のようにさえ思えてくるではないか。 まぁ秀晶に暗殺等の警戒をしても無駄な事は分かっているが。 結局幸村の隣部屋を秀晶が使う事になり、何が楽しいのか良い笑顔を自分に向けてくる秀晶から顔を逸らして深いため息をついた。 「とりあえず、ここが秀晶の旦那の部屋ね。厠の位置はさっき行った通りだし、朝餉と夕餉についてはまた後で教えるから。で、最初言った通りこっちの隣の部屋が旦那の部屋だから。たぶん朝っぱらから大将との殴り合いが始まったりしてだいぶ喧しいと思うけど、そこら辺は諦めて。後は〜…服についてはそのままで居ても良いけど、着替えあった方が良いでしょ? 持って来させるから何色が良いとか希望ある? あ、ていうか着れる? 出来ないんだったら着付けも呼んでこようか。何か用があったらそこら辺通りかかった奴に言うか、俺様呼ぶかして。あ〜と〜は〜……」 「佐助さん分かりましたから大丈夫ですので、そんな全部言おうとしなくて大丈夫ですよ」 最初の方は生活するにあたっての説明だったのに対し、後半に行くにつれてただの自分の子供が連れてきた友達を泊めるお母さんみたいになっていく佐助に、秀晶は落ち着いて下さいと笑う。 世話を焼いてしまうのが佐助にとっては、もう日常になってしまうのだろうかと今現在世話を焼く対象になっている秀晶は思った。 「好きな色は、そうですねぇ…紫系……は止めておきましょうか」 紫系と言った瞬間、佐助の顔の表情がひきつったので秀晶はふふふと笑いながら訂正する。 意図して言った事では無かったが、結果的には佐助を弄る事になり「楽しい楽しい」と笑い続ける秀晶に少しばかり殺意が湧いた佐助だった。 「明る過ぎる色は苦手ですので、一般の男性物でお願いします。それと着方は分かってますので大丈夫ですよ」 「ふーん、先の世でも着るんだ?」 「まぁご年配の方の一部が日常的に、由緒正しきお家の方達や、お仕事関係、祭りなどでは着る人は居ますね」 佐助の質問にふむ、と考えた後秀晶はそう答える。 「まぁ皆さんこういう南蛮物を着ますがね」 「へぇ」 (38/48) 前へ* 目次 #次へ栞を挟む |