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「これは…どう……」

「ふぅむ…、開けるにはどうするのじゃ秀晶よ」

「上の蓋を取れば良いだけですよ」


そう言って二人に開け方を教える秀晶の姿は、田舎の祖父母に携帯の使い方を教える息子さながらであった。
まあ実際、先ほどまで使い方を教えていたが。

カップを握ってみるとグニャリと柔らかく、だいぶ溶けてしまっていることが伺えた。
それはそうだろう。
まだ肌寒いとはいえ、春先の日に当たる場所に置きっぱなしになっていたのだから。

これは開け方によっては溢れてしまうだろうと思い至り、信玄のアイスは今手元にあるので幸村が開ける前に止めようとしたのだが…。


「ぬぉわっ!?」


男らしい、だが間抜けな叫び声を上げた幸村に、遅かったかと目を閉じた。


「ちょっと旦那、畳に溢してないよね?」

「う、うむ、畳は大事無い!」


幸村の言う通り、畳は大丈夫なようだ。
そう…、畳“は”。
幸村自身の手には飛び散ったらしいアイスがデロデロと乗っていて、着物はもちろん顔にまで飛んだようで、ちょうど鼻の下についたアイスがなんとも間抜けな顔に仕上げていた。
これで本人は精悍な顔付きをしており、なおかつ今は真面目な顔をしているのだからどうにも救えない。

パシャア

思わず、写真を撮ってしまったのは仕方のない事だろう。


「何でござるか?」

「いえいえなんでも。 真田殿、早く拭くか洗うかしませんとベタベタになってしまいますよ」

「えぇ!? ちょっ、早く脱いで旦那ってアハハハハー!!?」

「どうした幸む、……うむ。 意外と似合っておるではないか、ふはははっ」


にこにこと笑う秀晶と、笑いながら涙を流し始めた佐助、豪快に笑い飛ばす信玄に、訳の分からない幸村はただただ頭にハテナを浮かべるだけであった。

幸村が自分の手を舐め始め、綺麗になった頃。
やっと笑い終わったらしい佐助が「行儀悪いでしょ」と幸村を叱りつけ、被害にあった上の着物を脱がせて秀晶のタオルも洗うからと持って行く。


「秀晶殿! 大変美味であったでござる!」

「それは良かった。 本当は凍らせて食べる物なんですがね、これは」

「凍らせて、か?」

「えぇ、本当は」


ですがここには凍らせられるものはありませんしねぇ…、と手を頬に添え、困ったという顔をする秀晶をよそに、信玄と幸村は顔を見合わせ笑っていた。


 


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