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妹の『え、ちょ、意味分かんない』という声より信玄と幸村二人の表情に目が行った秀晶は、確かスピーカーにするには…と、耳から離して弄り始める。

だが電話の通話方法が分からなかった秀晶に分かるはずもなく、まだ携帯の向こうで嘆いていた妹に助けを求めた。


「スピーカーにするにはどうすれば良いんでしたっけ?」

『全然私の話聞いてないんだね、毎度の事だけど。 何でそんな必要があるのよ』

「私には説明するのが難しいので、実際にお互い会話させた方が良いと思いましてねぇ」

『どんな状況なのよ、お兄ちゃんは。 ていうか、お互いってどういう意味?』


怪訝そうな妹の声に、いやぁ…と少し参ったような声を出して自分の銀の髪に包まれた頭を掻く。


「実は私、帰れそうにないのですよ」


ひくりと、口をひきつらせた佐助が見えた。


またこの人は誤解させるような事を…。
まるで人が拐かしてきたような言いぶりで、いや、拐かしてきたんだけどさぁ。
一応和解したよね? 俺様達。
自分で仲良くなりたいとか言ってたよね?
ていうか、絶対この人の妹も勘違いして…。


『えっ、誘拐!!? ちょっとお兄ちゃん大丈夫なの!?』


ああやっぱりー!

予想通りの展開に頭を抱える。

何でこうもこの人は面倒になるような事ばかり起こすのか。
回収する自分の身にもなってみろ。


「いえ、誘拐ではないですよ」


あ、自分で回収した…?


「たぶん」


する訳ないよねー!

怒りにギリギリと歯を噛み締め堪える佐助の顔は、とても怖かったと後に三人の忍は語った。

『つまりどういう事なの!?』と切羽詰まってきた妹の声に、これ以上心配かけるのも悪いかと思った秀晶はとりあえず自分は(時を越えた)迷子になった事、そうそう簡単に(元の世界に)帰れそうでない事、住むところなどを提供してくれる(信玄や幸村や佐助などの)人達を見付けた事などを伝えれば、少しは理解して貰えたのか妹の声のトーンがいつも通りに戻る。

ちなみに、()内の事は伝えていなかった。


『一体どこまで行っちゃったのよ…』

「辺り一面森です」

『ずいぶん遠くまで行っちゃってんのね』


はぁ、と溜め息が聞こえてきて思わずクククと笑ってしまえば笑い事じゃないからと言われてしまう。


『とりあえず、これから世話になる人達に挨拶したいから電話かわって』

「分かりました」


 


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