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「このボタンのどちらかを押せば電話に出られるのですが、なにぶん、私もあまり機能を分かってなくてですねぇ…。 どうやら間違えて電話を切るボタンを押してしまったようでして」

「ぼ、ぼたん?」

「この突起の事を言います」


ボタンが何を意味するのか分からなかったらしい幸村が、たどたどしい口調で反芻するのを秀晶が携帯のボタンの一つを指差し説明する。

横で信玄までも「ほお」なんて言いながら顎を擦って見ているのを、佐助は本当にこの二人は…なんて思いながら顔を両手で押さえていた。


「だから、もうちょっと警戒するようにっていつもぉお…っ!!」


天井・床下・木の上に居る忍達だけが、佐助の振り絞るように出された切実な文句を聞いていて。

ああもう、禿げるこの人。

と、目を細めて眺めているのだった。


そんな一時も束の間。

また画面に妹の名前が表示され、あの曲が流れる。

二回目はさすがに誰も飛び出してきたりせず、幸村と佐助が反射的に仰け反り、武器に手を伸ばしかけただけであった。

秀晶も今度は正しく緑の受話器マークのボタンを押し、携帯を耳に押しあてる。


「はい」

『お兄ちゃん?』

「そうですよ。 すいません、先ほど間違えて電話を切ってしまいました」

『いつもの事だから平気。 それより今どこ? 何かコンビニ行ってから一時間くらい経ってるんだけど』


そう言われ一度携帯を耳から離して時間を見てみれば、確かに家を出た時間から一時間と少し経っている。


「そうみたいですね」

『そうみたいって…、また他人事みたいに…。 とりあえず今どこ? また道迷ったの? もしかして、光秀にそっくりとか言われて捕まってるとか?』


呆れたように言う声色から後半にいくにつれて笑いを含んだような声色になっている事から、後半は冗談で言っている事が分かるのだが、見事に的中していた。

チラリと佐助の方に目線を向けてみれば、信じられないというような顔をしていたが、秀晶と目が合うと妙に腰がひけた状態になる。

何だか面白い。


「三分の二は当たってます」

『は?』


二人の会話というか、妹の声が聞こえているのは佐助と忍三人のみの為、幸村と信玄は訳が分からないといった顔をしていた。


 


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