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ていうか笑ってる場合じゃないでしょー、と佐助がため息をつきながら額を擦っていれば秀晶の「電話」という単語に反応した幸村が身を乗り出し、信玄が手をその場でひらりとさせた。


「よい、構わぬわ。 元の就き場に戻るがいい」

「しかし、」

「構わぬ、と言っておる」


凄みの効いた声で再度そう言えば、仕えている忍としては上司、しかもトップと言ってもいい信玄に歯向かう事など出来るはずもなく、一度頭を垂れてから三人同時に消える。

それに満足したように信玄はうむと頷き、「して」と、秀晶に体を向けた。


「いい加減それをどうにか出来んのか?」

「あぁそうでした」


指差したのは、未だ音を流しながらバイブで震える携帯。

すっかり電話だという事を忘れていた秀晶はうっかり、と言った顔でふふふと笑う。

笑う所じゃないだろと、佐助と天井の忍と床下の忍と木の上の忍は内心毒づいた。


「それどうやるの?」


どうやら警戒を解いたらしい佐助が武器をしまい、遠くからだが携帯の画面を覗き込もうとしながら頭にはてなを浮かべる。

そんな様子の佐助を見てやっぱり可愛いですねぇなんて思っていれば、「何その顔!」と武器を構えられてしまうのだが。

そんな佐助の一動はさておき、秀晶は携帯の画面とにらめっこを始める。

正しくは、携帯のボタンと、だ。


(いったいどれでしたかねぇ…)


電話に出るボタンは。
これのどっちかだった気がするのだが、はたしてどっちなのか…と緑の受話器のマークと赤の受話器のマークの上で指が行き交う。


(緑と赤なんて、まるで佐助さんと真田殿ですね)


はてさてどうすべきかと視線を上げれば、画面を見ていたらしい佐助と目が合った。


「真田殿で」

「いきなり何の話?」

「其がどうかしたでござるか?」

「ごめん旦那、ちょっとだけ黙ってて」

「承知した」


いきなり秀晶から発せられた言葉に律義に反応する佐助だが、その分疲労が半端ではない。

しかも律義に反応した所で発した当人はもう意識はこちらになど向けていないのだから、割に合わない事この上ない。

現に秀晶はもうポチリと、赤を押していた。

途端に止んだ音楽。
終了と書かれた画面。


「間違えましたね」

「はい?」


また律義に、佐助が反応していた。


 


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