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「いやしかし、やはり面妖なものでござるなぁ…」

「そうですかねぇ」

「そうでしょ」


信玄と一緒に携帯を手に、適当にぽちぽちと押しながら言う幸村に相づちを打てば、隣からムッとしたような声と顔をした佐助に噛みつかれる。

そんな佐助を「おやおや」と目を細めて見る。

まだ先ほどの事を根に持っているのだろうか。


「何その目」

「いえ別に。 佐助さんは可愛いですねぇ」

「はァ!?」


裏返った声で聞き返し、目を見開いた佐助。

意味が分からない、いきなり何を言い出すんだと眉間にシワを寄せて、秀晶を凝視する。

というか、どさくさに紛れて今自分の事を名前で呼んでいなかっただろうか。


「気持ち悪いんだけど、何、本気でどうしたの秀晶の旦那。 頭打った?」

「酷い事を言いますねぇ、佐助さんは。 私はただ、仲良くなりたいだけなのですよ」

「それが何で俺様が可愛いなんて話に、」

「秀晶殿! 電話とやらはどうやれば良いのでござろうか!?」

「それはですね」

「仲良くなる気無いでしょ絶対!」


バンッと畳を叩き、眉を吊り上げる佐助の声を聞き流しながら、幸村が持っている携帯を覗き込む。

電話、と言っただろうか。
この青年は。

それは…。


「出来ませんね」

「なんと!」

「なんじゃと!」


似たような顔て驚く信玄と幸村に若干癒され、申し訳ない気持ちになるが、無理なものは無理だ。

前に言ったように、携帯の機能的にもう一台無くては使えないし、意味がない。


「そう言われましてもねぇ…。 もう一台無いとどうにもなりませんし、こちらの場所に電話がかかってくる事もなさそうです…し…?」


ふと目に入った携帯画面に出ている表記に、思わず言葉が詰まってしまった。

電池のマークの横、電波のマーク。

そこには“圏外”の二文字は無く、元気良く三本の棒が立っているのだ。


(なぜ…、)


こんな場所に電波が?

と思う間も無く、手の内にある携帯がバイブで震えだし、あまり音楽に頓着の無い秀晶の代わりに妹が設定したテンポの良い曲が鳴り出す。

画面には、妹の携帯の電話番号と名前。

音に驚いて素早く後ろに下がった幸村と信玄の前に、佐助が武器を持って立ち塞がり、三人ほど警備していた忍達が秀晶から少し距離を開けつつ、取り囲んだ。


そんな緊張感溢れる空気の中、当の本人はというと――。

「これが電話ですよ、真田殿」


そう携帯をこちらに向けて、にこやかに笑いかけてくる秀晶を見て佐助は思う。


――ほんと神経図太い。


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