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佐助なんかが良い例だろう。

佐助ならば速いし、たとえ敵方にバレたり見つかったとしてもほぼ確実に届けられるだろうが、本陣の戦力はかなり減るし、何より真田忍隊の長なのだから戦で取りまとめる人物が居なければ、これまた戦力は激減する。

それをこの道具は何のリスク無しでやってのけるのだから、喉から手が出るほど欲しいとはこの事だろう。


「秀晶よ、その箱について詳しく申せ」

「えぇ構いませんよ。 …ただ、もし、この道具を戦で利用しようとしているのでしたら私はお役には立てませんがねぇ」

「…なんじゃと?」


訝しげに眉をひそめた信玄にさえ秀晶はにこり、第三者の目ではにたり、と笑いかけるのだから、佐助の心労はかさむばかりだ。

またバクバクと跳ね始める心臓に自分自身情けないと思いながらも、ひとまず不穏な空気の漂い始めた場を宥めようと口を開いた。


「やっ、やだなぁ秀晶の旦那ったら! 変な冗談言わないでよ! 大将もさ、あんま根拠の無い物は利用しない方が良いですって! ね? 大しょ、」

「私は冗談を言った覚えは無いのですが」

「頼むからアンタは黙っててくれよ!!」


必死にごまかしているというのに水を注す、というか全力のフォローを妨害してくる秀晶に思わず鋭い目つきと声で当たり散らしてしまう。

しまった、と思う。

が、秀晶は大して気にしたふうでもなく。


「おぉ、怖い怖い」


なんて言いながら薄ら笑みを浮かべて体をユラリユラリと揺らすものだから、いつぞやの戦での光景が脳裏を駆け巡り、鳥肌が立ち、次の瞬間には罪悪感なんて物は消えていた。


佐助は「はぁ〜…」と、バレない程度の深いため息をつく。

なぜこんなにも疲れるのか。
ただ自分はなんとか良い方向へ持って行こうと一所懸命に頑張っただけだというのに報われず、重労働のわりには給料は安いし、殴られる盾にされたりするし、上司二人はいつも仕事を増やすし、何度注意しても直してくれないし、壊した城も直してくれないし、小さい頃からよくしてやったかすがは最近冷たいし、軍神の事なるといつも壊れるし、それなのにいつもいつもいつもいつも…――。


「さ、佐助、佐助っ」


佐助がモヤモヤと暗い事を考えているのに呼応したのか、佐助の足元からじわりじわりと黒いもやもやが広がって行く。


 


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