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佐助が唸りながらだが胡座をかいて座れるようになった頃、さて、と自身の姿勢を正し座り直す。

秀晶のその雰囲気に気付いたのか、先ほどまで年相応に騒いでいた幸村も姿勢を正し、その精悍な顔付きに似合う雰囲気を纏って真っ直ぐに秀晶を見つめてくる。

佐助も気持ち悪そうにだが顔をこちらに向け、信玄は二人を見やってから秀晶に視線を向けた。

秀晶は信玄と目が合うと口元に笑みを浮かべたまま喋りだす。


「まず先ほどの猿飛殿の事ですが、あれは写真と言い、ただの鏡のような絵です」

「鏡のような、絵とな?」

「えぇ。 …まぁ細かく言えば全く違うんですがねぇ、鏡のように本物とそっくりの姿や物、景色を一瞬で絵にし、記憶します」

「…じゃあ、魂が吸い取られたりとか…、その“しゃしん”とやらが消えたら何か起こるとかは…」


恐る恐る、というふうに聞いてきた佐助に幼い子のように可愛らしいなどと思ってしまい、口元に浮かべた笑みをそのままに目を細めるが、本人の意図とは大幅に違い、佐助はその秀晶の様子に鳥肌を立てていた。

その理由はやはり、雰囲気は違えど顔が同じだからなのだが。


「ないですよ。 そうだとしたら、猿飛殿はとっくのとうに消えているじゃあありませんか」


声を上げて笑うのは失礼かと思いクククと喉で笑えば、なおさら佐助の顔色が悪くなっていく。

一応良心からの行動だったゆえに、それに全く気付かない秀晶は左右交互に首を傾げ、少し俯き加減で笑うものだから、本当になおさらである。

これでもかと佐助の精神力を削った頃、「まぁそれはさておき」とようやく笑い終わった秀晶がまた携帯を手にした。


「これは本当に便利でしてねぇ…、遠くに居る人間とすぐさま話す事も文通する事も出来るのですよ。 フフ、凄いでしょう?」

「ほぅ」


再度自慢されたこれには、信玄が食い付いた。

やはり戦場を纏める大将の信玄にとっては、この機能は実に惹かれる機能なのだろう。

興味を持つ点については信玄に限った事ではないと思うが、飛脚を飛ばすのにも忍を飛ばすのにもかなりのリスクがかかる。

飛脚は敵方にバレる可能性は低いが、バレた時にはあっさりと殺されてしまうし届くのにも時間がかかる。

忍は早いがバレる可能性が高く、あっさりと殺される事は少ないが相手の強さによってまちまちだし、だからといって強い忍を送ればその分戦力が減る。


 


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