14天井を仰ぎ、うがぁっ! と両手で顔を覆う佐助を横目で見ながら、秀晶はこの人はいつかストレスでハゲるんじゃないかと心配するが、とりあえず信玄に説明しようと見てみぬフリをした。 「これは一円玉と言って、こちらで言う銭とでも言いましょうか。 これの上に五円、十円、次に五十、百、五百」 そう呟くように言いながら出ていた小銭と財布から出した硬貨を並べ、次に千円札を取り出す。 「玉は終わりで次に千円のこちらになります」 「ただの紙ではないか」 「えぇ、札ですから。 この次に五千円札がありますが今手持ちにはありませんので、その次の一万円札がこれです」 「ほぅ…」 「こちらの世界はどんな単位かは分かりませんが、一つだけで一番低いのが一円、一番高いのが一万円だととでも思っていて下さい」 これで全部でしたかねぇ、あ、二千円札の事を忘れていました。 まぁ大丈夫でしょうけど…。 もうお札が無いかと財布の中を漁りながらチラリと信玄達の方に視線を向ける。 信玄や幸村は既にキラキラ輝いた目で各々自分の興味のあるものをつまみ、眺めているが、佐助ももう二人を止めるのを諦めたのかこちらを警戒しながら千円札に手を伸ばしていた。 「…凄いねコレ、俺様こんな精巧な絵を見たの初めてだよ。 誰が描いたの?」 「いえ、描いたのではなく機械で大量に印刷されてます」 「きかい? いんさつ?」 「機械というのは絡繰りで、印刷というのは版画のようなものです」 「へぇ…先の世ってのは便利なもんだねえ…」 尖った鉄の爪のような物でつまみ上げ、ピラピラと皮肉るように呟きながら日にかざした瞬間、びくりと佐助の体が跳ねたのを見て思わず笑ってしまう。 「なっ! 何コレ!!」 「どうした佐助!」 その声に反応した幸村も佐助の手元を覗き、「これ見てよ」と佐助の手によって日にかざされたソレを見て、体が浮いたのではないかというぐらい跳ね上がる。 そしてそれを見た信玄も「どれ、儂にも見せよ」と受け取り日にかざし、おおっ、と目を丸くした。 どうやら三人共、すかしに驚いたようで。 「何じゃこれは、秀晶、説明せぃ!」 「詳しい事は私にも分かりませんが…おおかた、障子の紙に木の葉を入れて模様にするのと同じ原理でしょう」 それで納得したのかしてないのか、千円札片手に肘をついて眺め、考えたように黙り込む。 (14/48) 前へ* 目次 #次へ栞を挟む |