13その言葉に秀晶は「いえいえ」と頭を降り、天井を見上げる。 「妙な誤解を生まない為に、です。 私の記憶違いでなければあなたは真田十勇士の長で、あなた程の忍が居るのであれば他にも居るのは確実でしょう。 しかも信玄公ともなれば護衛は必須。 最初に会った猿飛殿ならまだしも他の方に誤解され、また同じような事をされるのはさすがにまっぴら御免でして」 お分かり頂けたでしょうか? にっこりノンブレスで言い切った秀晶に笑顔のまま固まってしまう佐助だったが、結構喋るねこの人とか思っていたり、喰えない人だとも思っていたり、最終的にはよく喋る明智という結果になっていたりした。 だがずっと固まっている訳にもいかない。 信玄に「早よ、早よせぃ」と急かされ、秀晶の近くに半歩近寄る。 発破の可能性もある為、秀晶の上着脱いだ方が良いですかの提案を断り、やむを得ず内ポケットに恐る恐る手を突っ込んだ。 「中に入っているのは全て出して頂いて結構です」 「全部? って言ってもゴチャゴチャ入ってるけど」 「小銭ですね。 あ、ズボンにも財布がありますが、どうします?」 「ずぼ…?」 「…下穿き…とでも言いましょうか……」 「…ごめん、場所によっては自分でお願い」 そう言われた秀晶は体を少しだけずらし、後ろのポケットから茶色の革財布を取り出す。 それを前に腕を伸ばして置き、その隣に佐助が内ポケットの中身を置いた。 チャリチャリという小銭独特の高い音と、プラスチックの軽い音が鳴る。 そしてカサリと紙とビニールの音。 出て来た物は財布に小銭、携帯、四本ほど使った煙草、ライター。 「多分これで全てだと思いますが…」 「うわ、何コレ…」 「め、面妖な物ばかりでござる…!!」 「…ふぅむ」 佐助は若干引き気味、幸村と信玄は興味津々。 ただ信玄の方が興味津々度はかなり高いようで、既に一円玉をつまみ上げている。 「ちょっと大将、 勝手に触らないで下さいよ!」 「案ずるな佐助。 して秀晶よ、これは何に使う?」 「それはですね…」 「聞いてよ大将ぉぉおお!!」 (13/48) 前へ* 目次 #次へ栞を挟む |