12




辺りを見渡し、ふふふと困ったように笑う秀晶だが、周りには笑える程意味を分かってはいなかった。


「えっと…つまり?」

「はい?」

「いや、はい?、じゃなくて、“時”が違うってどういう事」


どういう事って…そういう事? なんて言ったらさすがに怒られてしまうでしょうねぇ、と思った秀晶は「つまりですね」と説明し始める。


「私はこの時代より先の世の人間となります。 私はこの時代より少し進んだ所から 何故か 来てしまったようでして」


“何故か”を強調し、一度区切る。

強調したのは他でもない、聞かれた所で分からないからだ。

どうやらその意図に気付いてくれたのか、何か聞きたそうな顔をするものの聞いてこない。


「いきなり森に出て来て途方に暮れていた所を、偶然通りがかったらしい猿飛殿に押し倒され、罵倒され、殺されかけ、こちらに連れてきて頂きました」

「佐助ぇぇぇええええっ!! 減給だ!」

「え゙え゙ぇ!!? ちょっ、待ってよ旦那ぁ!!」


仏のような笑顔でかまされた爆弾発言に、物の見事に食い付いた幸村は凄まじい勢いで減給を言い渡す。

実際本当に感謝の意を込めたのとちょっとした仕返しだった為、涙目の佐助を見て上機嫌に笑みを漏らしてしまう。


「アンタ……」

「おや? 何か私は間違った事を言いましたか?」

「…言ってないです」


にこりと向けられた微笑みに言い返す事が出来ず、ただただ自分の給料が減ってしまう事を受け止めるのみだった。


「私に言える事はこれくらいでしょう、ここに来たのはまだほんの少し前ですから」


そう言って口を閉ざすと、真っ直ぐと目の前の信玄を見つめる。

静かに秀晶の話を聞いていた信玄は閉じていた目を開くと、ニヤリと笑う。


「それを証明出来る物はあるか?」

「あります」

「ほう、見せてみよ」


言葉では高圧的だが、その目は明らかにワクワクドキドキしており、上座から身を乗り出して来ていて。

取り出そうと懐に手を入れる…前に一瞬手を止め、クルリと振り向いて佐助の方を向く。

クルリと振り向く様が光秀に似ていた為思わず身構えてしまうが、顔を見れば秀晶だと分かり警戒を解いて「何?」と聞いてみる。


「あなたが取り出して頂けますでしょうか? 私がやると余計な心配が掛かりそうですし」

「…アハー、それ嫌味?」


 


(12/48)
前へ* 目次 #次へ
栞を挟む
×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -