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武田信玄……真田幸村……猿飛佐助……。


カチリとパズルのピースがはまったかのように、バッと顔を上げた。


「信玄公……!!」


ガシリと信玄の両手を掴んだ秀晶に、不意打ちだった幸村と佐助は反応出来ず少し遅れて武器を構える。


「ちょっとアン…」

「貴様ぁあ! お館様に何をするか!!」


「俺様の台詞、遮んないで欲しいなぁ旦那…」と呟く佐助の言葉を幸村が聞いているはずもなく、ギリ…ッと自分の二本槍を握り締める幸村は、唇を噛み締め思う。


油断した。

あまりにもあの明智とかけ離れている雰囲気の持ち主であったから、様子見をしたのが間違いだった。

所詮は織田の策だったのだ。

何という事をしてしまったのだろう、俺の所為でお館様が…お館様が……ッ!!


「申し訳ございませぬぅぅぅううっ!! ぅお館様ぁあぁああぁあぁああっっ!!!」

「旦那ちょっと静かにしてよ! なんか知んないけど一応言っとくよ、大将まだ死んでないから!! それにちょっと違うみたいだし」


頭を抱え天を仰ぎ叫ぶ幸村に、主に対してそれは冷たいんじゃないかというぐらいの言葉を掛けた佐助は二人の会話に聞き耳を立てる。


最初は武器を構え、殺そうとした佐助だったが、信玄を見れば「動くな」という目をされ止まったのだ。

自分としては危険分子はやはり早々に排除しておきたいのだが、大将に命令されては仕方ない。

仕方なく聞き耳を立てていれば、明らかに変な緩い内容で。


「あなたがかの有名な信玄公でいらっしゃるのですか、なんとも奇妙な事ですが、会えてとても嬉しく思います。 ああすいません、いきなり手を掴んでしまって。 先祖の時代の方に出会えて嬉しかった為、興奮してしまいました」


ブンブンブンブンと掴んだ信玄の両手を振る秀晶の後ろには、どす黒い闇バサラが漂って……いない。


どちらかと言えば紅梅色だろうか…、幸村と佐助にはぽわぽわした花が浮かびだしながら蝶のような羽が生えた小さな女が飛んでいるように見える。

いやいやおかしいと頭を振れば見えなくなるのだが、またしばらくすると見え始めるのだからなんとも可笑しい話だ。


そんな秀晶を見ながら「うむうむ」と頷いていた信玄だったが、思い出したように口を開く。


「して、お主の名は何と言う?」



その言葉に「そう言えばそうですね」と手を離し、恭しく一礼しにこりと微笑んだ。


「申し遅れました。 私、明智家二十四代目当主、明智秀晶と申します」


以後、お見知り置きを。


そしてまた一礼する秀晶に、幸村と佐助は固まる。


二十…四代目…?

明智、家?

明智…秀晶…?



「「…え?」」



二人だけでなく、周りにいた耳の良い忍達全員の時が止まったという。


ただ一人、信玄だけが喰えない笑みを浮かべながら「幸村も佐助も皆もまだまだよのぅ」と心底面白そうに笑っていた。




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