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「さぁぁああすぅぅううけぇぇぇぇええっ!!」

「へ、うわっちょっ! 旦那! 待った待った待っ……たぁぁああ!!」


風のようにやって来て佐助を巻き込み、竜巻になって去って行った赤い物体。

ちょうど信玄と秀晶の間に居た佐助を連れ去った赤い物体を、つい信玄と秀晶は目で追ってしまう。


竜巻は奇妙な叫び声と佐助の悲鳴を発しながら通り過ぎた後も勢いは収まらず、そのまま進み続け、壁にぶつかりけたたましい音を立てて止まる。

ガラガラと凹んだ白い土壁の欠片に埋もれながら、赤い物体と緑の物体…もとい佐助は居た。


憔悴しきった佐助よりも早く、赤い物体は起き上がり佐助の胸ぐらを掴んで起こす。

その起こし方はどうなんだろうかと思う秀晶だったが、「まぁ平気そうですし、あの方なら大丈夫でしょう」と放っておく事にしておいた。


「よく帰った佐助ぇ! 大事なかったか!!?」

「ああうん、ただいま旦那。 旦那が来なかったら大事なかったよ」


アハー…はぁ…。


なんて明らかに目が笑ってない、目を合わせない佐助に気付く事もなく、「うむ、そうか!」と掴んだ胸ぐらをパッと放す彼には落下し、下に散らばる瓦礫にしこたま腰を打った佐助は見えてないのだろうか。

「痛って〜」と腰をさすりながらゆっくり立ち上がる佐助を見ながら「ご愁傷様です」と仏のような笑みで声を掛ける秀晶もなかなかだが。


「むっ! お、お館様! 何故明智殿がここに…」


赤い物体もとい真田幸村は今更ながら秀晶を見て驚く。

なぜこんな所に、話をするのもおぞましい人物が居るのか。


信玄はそんな幸村を見て、豪快にニカリと笑い「まあ待て」と制止を掛けた。


「名を問う前に先にこちらが名乗らねば無礼というもの、我が名は武田信玄! 甲斐を統べておる!」

「其の名は真田幸村! 日本一の兵なり!! 今はお館様より頂いた上田を統べさせて頂いている所存!」

「あ〜あ〜そんなに情報あげちゃって…俺様知〜らないっと」

「佐助ぇ! お主も名乗らぬか!!」

「無茶言うなって、忍がそんな簡単に情報をあげる訳…って、もう城に連れて来てる時点で遅いか…。 俺様の名は人呼んで猿飛佐助! 今は旦那…真田の忍をやってる」


よろしくね〜、と困ったように笑う佐助を見ながら、今言われた名前を頭の中で整理する。


 


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