■ お洗濯物

 ようやっと自分の任された洗濯物を洗い終わり、俺のペースに合わせてくれていたらしいお幸さんも同じく洗い終わる。
そして新しくまた洗濯物をとってきてゴリゴリゴリゴリ、リピート。

 それを三回、…と言っても、他の女中さん達に比べてだいぶ回数も少ないし遅かったのだけど、本当の本当に洗い終わる頃には東の空がじんわり明るくなってきていた。

 おおー、なんて自分のふやけた手を空にかざしていれば隣にスッと長い指をした手が並ぶ。
もちろん、その手もふやけている。


「おれのて、ふやけてフニフニ」

「だねぇ」


 二人で笑って、こっちだよと手をひかれ付いて行く。
お幸さんの小脇には桶に入った洗濯物。
少し歩いた所にすでに何人かの女中さんが作業していて、皆物干し竿に洗濯物を広げ干していた。

 いつもなら俺がまだ寝ている時間こうやって皆頑張っていたのだと思うと、なんだか驚いたような、申し訳ないような。
誰かがやってくれているってのは当たり前なんだけどね。
ありがとうございます。

 洗濯物の端を持って思い切り振ると、パンッ! と鳴ってシワが伸びる。
俺も是非お手伝いしたいんだけど、残念ながら俺の身長だと振って地面に擦り付けて洗い直すだけなので、桶から洗濯物をお幸さんに渡す係です。
大きくなりたいなぁ、なれるかな。
目指せ小太郎。

 お幸さんに渡して、頭の上でパンと鳴る度に水滴が顔に振ってくることだけは困った。
そしてお日様が顔を覗かせる頃には全部干し終わって、お洗濯ミッションコンプリート。


「つぎ、どうするの」

「次はねー、もう朝餉の準備出来てると思うから配膳かなー。ハイゼン、分かる? 皆の朝ごはん並べるの」

「わかる」

「すごいねー。でも今回は初めてだから皆の配膳はまた今度ね」


 その言葉にしょんぼりしたのがバレたのか、顔を見て笑われて今度はやってもらうからと頬を揉まれる。


「今日はね、ちょっとお楽しみびっくりをやってもらうから」


 悪戯好きそうな笑顔を見せて笑うお幸さんに、訳のわからない俺は首を傾げていた。



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