■ おねだん



朝、気持ちの良い朝。

この時代の朝は早いから、あの頃の、現代の朝よりかなり早い明け方。

夏の日の、ひんやり心地よい藍色の薄暗やみに珍しく俺はいた。

手には桶と、名前は分からないけれど時代劇ドラマで見たことのある表面がぎざぎざの洗濯板。
着ている着物の袖はたすきで上げられて、裾も帯にはさんである。
同じような格好をした女中さんたちに囲まれて、どんどんと運ばれてくるのは夜のあいだ水に浸けられていた洗濯物。
そして廚から運ばれてくる白い水。

まだ日が昇るまで時間があるけど、その量は途方もない。

女中さん、下男さんたちの毎日の修羅場だそう、です。


温泉から帰ってきて、じぃちゃんのお膝で一息ついていた時に、ふと、小太郎の休みってあるのかなと思った。
夜は帰ってくるときもあれば夜に出て行ってしまうこともあるし、朝にいることもあれば朝もいないときもある。
それはいつものことで、あまりにいつものことだから気づかなかったのだけれど、思えば毎日それなのだ。
毎日毎日、せわしなく出て行って帰ってきてまた出て行って。
たまに休みをじぃちゃんに押し付けられているようだけど、日曜日のお父さん、みたいなテンプレ姿を見たことがない。

ましてやじぃちゃんと居ないお出かけ姿なんて、全く見たことがない。

そして俺を拾った日は、小太郎の休みの日だったらしい。
まぁそれもじぃちゃんが押し付けた休みの日なんだろうけど、俺を拾ってくれたのが自発的のことだったということが分かって嬉しい反面、貴重な小太郎の休みを俺が奪ってしまったのだと申し訳ない気持ちになった。

結果がいま、この状況です、はい。

簡潔に言えば、小太郎に休みをプレゼントしようと思ってます。
でも、じぃちゃんがお金払って、小太郎もお金もらって、そうやって成り立ってる関係らしいので俺もきちんと自分でお金稼いで、それでちゃんとお金払ってじぃちゃんにも小太郎にも損失の出ない方法を目指しているしだいであります。

…ただ、その…小太郎の契約金聞いてびっくりした、ほんと…。
話をしてるじぃちゃんのほうが遠い目してたもん……。

詳しくは言えないけど、小太郎の強さみれば納得のお値段というか、これでもお値段以上・フウマくらいの値段ではあるらしい。

伝説ってすごい。
そう思いました。



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