■ 生まれた


で、気付いたら生まれてましたっていう。

しかも生まれた場所が戦国時代っていう。

生まれてすぐに死亡フラグ立ちました。


それにさ、早く死ぬのは時代の所為だから仕方ないと思ってるんだけど…。


「知らないってのよ、そんなの」

「知らないって…お前の子だろ」

「あんたの子でもあるくせにっ、そんなに飯食わせたいんなら、あんたが食わせれば良いじゃないの!」

「金切り声で怒鳴るんじゃねえ!! お前の仕事だろうが!」

「喧しいのはどっちがよ!? 何だっての、 私はもう勘弁だよ! こんな化け物の世話!!」


ありゃりゃ、またやってる二人共。

分かりました、ご飯は要りません、出てくから大丈夫。
自分で取って来ますから、お気遣い無く。


そう心の中で言いながら、腰掛けていた家の土間から立ち上がる。
家から遠ざかるにつれて、二人の大きな声が小さくなっていくから、少しだけ安心した。
怖かったかっていえば…怖かったのかも。

まぁしょうがないんだけど。

とりあえず何食おうかな、この時期だとギリギリアケビ残ってるかな?
木によじ登って蔓を引っ張って実をもぎ取れば、すこししなびた木の実が手に入る。
あの家で出るかも分からないご飯を待つより、よっぽどマシだ。

それでもやっぱり――。

木の枝に座ったまま、村を眺めつつアケビを口に運ぶ。


――やっぱり、早く死ぬんだったら愛されたかったなぁ…と、思う。
うん。

どうやら俺はあまり、二人の期待に応えられる作りをしていないらしい。
生まれた時期が悪かった事もあると思うけど、一番の理由はこの容姿だと思う。



俺の目、赤いんだって。


 

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