■ 山中探索

「こた、ぼさぼしゃ」


いかん、ラスト舌が回らなかった。
両手で小太郎の髪を、ペタペタと撫でつけながらそう言う。

小太郎の髪の毛サラサラー、でもパサパサー。
何だろこの感触、わんこっぽいけど、鳥の羽っぽい気もするなぁ。
こう、拾ったカラスの羽根を撫でた時みたいな感触がする。

そのままずっと触っていれば、後ろからじぃちゃんに襟足の髪を掬い上げられて、思わず“ぴゃっ”と体が跳ねた。
うん、“ぴゃっ”て。


「才蔵は猫っ毛の癖っ毛よのぅ」

「そ?」


跳ねとるわ、とじぃちゃんに両手ですっぽり被せるみたいに撫でられる。
でもじぃちゃん、たぶん、さっきわしゃわしゃ拭かれてそのままにしてた所為もあると思うよ。
それに子供の髪の毛って細いしねー、と自分でも髪を掴んで見ていれば、じぃちゃんに「しばらく散策でもするか?」なんて聞かれ、こっくり頷く。

是非ともしたいです、探検!

人差し指で脱衣場の裏手にある山を差せば、ちょっと困った顔をされた。
そして髭を触りつつ悩んでいたのだが、うーむ…、と最後に大きな唸り声を出したあと小太郎をちょいちょいっと指で呼びつける。


「ワシはさすがに険しい所はついてゆけんからの、風魔、お主がゆけ!」

「……(フルフル」

「なんぢゃ風魔! ワシは一人でも大丈夫ぢゃわい!」

「……(フルフル」

「おれ、も、だいじょぶ」

「……(フルフル」


今回ばっかりは譲らないらしい小太郎。
まあたしかにじぃちゃんは国主さんだし、何か不安だから心配なのは分かるけど、俺は何でもないから大丈夫なのに。
村の時に、山歩きは慣れてるし。

じぃちゃんと二人でムムムと考えていれば、じぃちゃんがぽむっと手を打った。


「風魔! ワシをおぶれ!!」

「…………」


俺が行くのを止める、っていう選択肢は無いのかなじぃちゃん。
結局行かせてくれたので、素直に喜んで楽しんでおきます、というか楽しい。

拾った木の棒でピシパシ生い茂った葉っぱを叩きながら、ざくざくと進んで行く。
やっぱり久しぶりに体動かすから、自然と楽しい方、つまり険しい道を進んでしまっているから、じぃちゃんは背負われてて良かったかも。
むしろじぃちゃん背負ってて息一つ乱さない小太郎凄い、かっこいい。
俺結構、子供なりに激しい動きしてるのに。


「才蔵は身のこなしがええ動きをしとるのぅ…、忍の子のようぢゃ」


じぃちゃんのその言葉に、思わず笑みがこぼれた。

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