■ ぬくぬく

そんな俺を見てた小太郎が、定期的に桶でお湯をかけてくれた。
ありがと小太郎、すごい助かる。
さっぱりして、ちょっと髪を絞ったあと動物みたいに頭をブルブルと振って水気を飛ばす。
良い感じに水気が飛んだのは良いんだけど、振りすぎて立ち上がって歩いたらフラフラしてしまった。
またもやそんな俺を見てた小太郎がUFOキャッチャーよろしく捕獲して、温泉の中へと連れて行く。
すいません、何から何まで…。
ペコリと頭を下げれば、ぽんぽんと頭を撫でられた。
…やっぱりじぃちゃんも小太郎も俺をオトす気だ。


「よし、才蔵。 百数えたら上がるとするかの」

「ひゃくから? いちから?」

「案外細かいこと気にするのぅ…、一からぢゃ」


ぬくぬくと小太郎の膝の上で温まっていると、じぃちゃんがそんな事を言い出す。
百って一からなのか、それとも百から数えれば良いのか分からなくて、どっちからと聞いたら苦笑された。
いやいや…結構重要だってじぃちゃん。
だってじぃちゃんは一って言って、俺は百って言ったらどうするの。
いきなり終わっちゃったじゃん、数え始めたばっかりなのに。

そんな事を考え込んでいれば、むにむにと引っ張られ、意識を戻させられた。


「ほれ始めるぞい、いーち」

「いーち」

「にーい」

「にぃー」


じぃちゃんが言った後に続いて数えていく。
うん、ちょっと発音間違えたけど。
そういえばこれ、発声の練習になるよね。
むちゃくちゃ丁度良いよねコレ、修行だ修行! よっしゃ俺頑張る!
なんて思い、お腹のところにあった小太郎の手をぎゅむーッて握り締めて、百まで数えました。
やったぜ小太郎! でも小太郎の手の血ぃ止めてたね、ごめん。
だけど何も言わない小太郎ホント大好きです。


ほかほか出来立て俺、リターンズ。
我ながらアホな事考えてるなぁ、と思いつつ上がっていく二人について行くために、縁の岩によじ登る。
さて脱衣場に戻るかー、と歩を進めようとしたところをじぃちゃんに腕を掴まれ、待ったをかけられた。
そのまま川の方まで連れてかれ、おもむろにじぃちゃんが持っていた桶で川の水を掬う。
何をするんだろう? と見ていたら……。


バッシャア!!


……え?

目に映ったのは、その冷たいだろう川の水を頭から豪快に被るじぃちゃん。
予想通り飛び散ってきた水は冷たい。
ねぇ、じぃちゃん。
…まさか、俺にそれを、やれと…?

[ prev / next ]
×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -