■ ゴシゴシ

俺とじぃちゃんだけ振り向いて、小太郎と向き合うようになる。
終わったと思い、たたみたたみと布を畳んでいた小太郎は俺達と目が合って、頭にはてなを浮かべた。
そんな小太郎に二人でにこーっ! と笑みを返せば、一瞬だけ面食らって、あぁ…と理解したらしく俺の顔を両手でサンドイッチみたいに挟んだ。
ぶにっと頬の肉で顔が変な顔になって、俺がそれに慌ててから満足したらしく後ろを向く。
くそっ、やったな小太郎め。

潰された顔を両手で引っ張る。
まさか挟まれるとは思わなかった。

布を片手に持って小太郎の背中に手をつき、じぃちゃんに支えてもらいながら椅子の上に立つ。
いや、うん…身長足らなくて…。
ゴシゴシと背中を擦り始めればじぃちゃんも俺の背中を擦り始めて、さっきの俺達の逆バージョンになる。
思わずにやけていた所を、いつの間にか振り返ってた小太郎にバッチリ見られました。

小太郎の背中はぶっちゃけ、じぃちゃんより頼りがいがあるというか、凄く強そうだ。
筋肉ムキムキだし、背ぇ高いし、おっきいし広いし。
さっき見たけど胸筋も腹筋も凄かった、何だアレ羨ましい。
やっぱり男の夢は筋肉ムキムキだよね、力こぶとか、本当に羨ましい。
チラリ、と自分の体を見る。


(幼児体型……っ!!)


現実なんてそんなもん。
何だ俺、改めて見ると貧弱の極みだなぁ。
一応肉は付いてきたけど、相変わらず細っこいし肌白いし。
筋肉とか何それ美味しいの? みたいな感じだし。
鍛えよう、うん、でなきゃ小太郎みたいな忍になれない。
視界いっぱいに広がる小太郎の背中に、散りばめられている大小様々な傷跡を、少しだけでも増やさないように出来るくらいに強くなりたい。
久しぶりの目標というか、決意が出来て、更に力を込めてゴッシゴッシと背中を洗った。

あまりに力を入れすぎて俺がへばった頃、じぃちゃんが「もう良いぢゃろ」と桶に入ったお湯で俺の頭から流す。
それを真似して俺も受け取った桶でお湯を掬って持ち上げるが、欲張って掬いすぎたせいかくるりと桶はひっくり返って全部溢れた。
桶が落ちたカッコーン、の音のあとの沈黙が、凄い恥ずかしかったです。
じぃちゃんに手伝ってもらって次はちゃんと出来たけど。

そういえば、髪洗ってないなぁと思うが、石鹸なんて無いだろうからこしこしと自分で桶に水を汲んで洗う。
あんまりスッキリはしないんだけど、しないよりはマシ。

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