■ 考えてる

そんな事を遠い目をしながら思っていれば、当然のごとく俺の思っていた事なんてスルーした小太郎が背中を洗ってくれている。

その洗い方がなんというか、痒い所に手が届くを文字の通りやってくれているというか。
もう、めっちゃ気持ち良いです。
はい。
しかも久しぶりの風呂だから尚更気持ち良い。

ちょっと小太郎のテクに酔っていたら、目の前にじぃちゃんが椅子を持ってやって来た。
そして俺にあの薄茶色の布を渡したあと背中を向けて座る。


「才蔵、ワシの背中も洗ってくれんか」


どうしたの? と聞くよりも早くじぃちゃんがこっちを向いて笑いながら言うものだから。
一瞬ぽかりと開いた口が一気に弧を描いた。

これってアレだよね、今後ろに小太郎が居て、俺の背中洗ってくれてて。
で、俺がじぃちゃんの背中を洗う。
…銭湯でいつかやってみたい有名なアレだ!
あのよく見そうでよく見ない、やるには恥ずかしいアレだ!!
やりたい!


「や、るっ!!」


そんな嬉しい誘いを断るはずもなく、ぎゅむっと布を握りしめこっくり頷く。
幸いじぃちゃんの身長なら俺でも一応肩甲骨の所までは届くし、うん、座ってればの話。

ちらっと一回後ろを振り向いてから立ち上がる。
たぶん、小太郎話聞こえてたろうから大丈夫だと思うんだけど、いきなり立ち上がってびっくりしないかなぁと。
案の定大丈夫だったみたいで、そのまま腰の所を擦ってくれている。
何か知らないけど感動した。

渡された何だか分からない布を両手で持ち、じぃちゃんの背中をゴシゴシと強く擦る。
俺は非力だから、たぶん強く擦んないと普通並にならないと思うんだよね。
やっぱりその予想は当たってたみたいで、そのままゴシゴシ洗ってたらほぅ…ってなりながら「えぇ気持ちぢゃわい…」って言ってたから。

その言葉が妙に嬉しくて、ニマニマ笑いながら背中を全面的に擦る。
やっぱり歳だからかシミがあったり、武将さんだから古い傷跡もたくさん残っていて、少しだけ心配というか、悲しかったりするんだけど。
体全部を使って背中全体をゴッシゴッシとやっていれば、小太郎が洗いにくかったらしくて脇腹を掴んで捕獲された。
…小太郎、いくらなんでも脇腹はびっくりするよ…。

くるりと後ろを振り向くじぃちゃんに、俺も後ろを向くように指で指示される。


あ、じぃちゃんが考えてること、なんとなく分かった。

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