■ ゆっくり
「もちろんぢゃ才蔵、風魔も共に入るでの」
「……!」
とても良い笑顔で俺にそう言うじぃちゃんの横で「初耳です」って言ったみたいな顔をする小太郎。
あぁ…絶対これじぃちゃんの思惑だなぁ、なんて思いながら上手くいくようにと願う俺です。
だって一緒に入りたいし、一応小太郎以外の忍さんもついて来てるみたいだし、小太郎ごめん。
でもやっぱりお仕事だし、安全のためには駄目だよなぁ。
一方、「困ります、周りの警備をします」と身振り手振りで氏政に伝えていた小太郎だったが、言い出したら聞かない氏政に色んな意味で通じる訳もなく。
最後の手段としていつも使っている『必殺・いきなり消える』をやろうとしたのだが、なかなか鋭い翁は「ふぅ…」と切な気なため息をつき、才蔵を引き寄せる。
「そうか。 風魔はこんな、か弱い老人と子供を置いてゆくのか…はぁ〜…心細いのぅ…、のう才蔵?」
「…!!」
「ぇ、えと…」
ヨヨヨ…、と泣き真似をしながら小さい背中をより一層小さくして才蔵にすりより、極めつけには話を才蔵に振るとは。
いきなり話を振られた才蔵を見れば、相変わらず切羽詰まったようにこちらと翁の顔をくるみのような赤い瞳が行ったり来たりしていて、何と答えて良いのか分からないらしい。
モジモジとして口ごもる様子からするに、答えは出ているのだろうが、言って良いものか迷っているようだ。
「一緒が良いぢゃろ? 才蔵」
後押しするように翁が問いかければ、ようやくコックリと首を縦に振る。
「いっしょのがいーけど…でも…、」
「…?(コテン」
「だめなら、だいじょぶ」
明らかに残念というか我慢している雰囲気をかもし出しながらそう言われても、全然大丈夫そうじゃない。
いじらしいと言えば可愛らしいが、これはどちらかと言えば押しが弱いというか遠慮し過ぎな領域だろう。
いつだったか翁が言ったように「子供は子供らしく甘える」というのが出来れば楽であろうに。
まだそこまで強く出れるほど安心しきれていないのだろうか。
信頼出来ていないのだろうか。
まぁそれは追々だ。
「わ、」
「……(ヒョイ」
才蔵を抱き上げ、たむたむと背中を叩きながら翁に向け頷いて見せる。
一緒に入るという意味で頷いたのだが上手く翁にも伝わってくれたらしく、「うむ」と頷き返してくる。
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