■ 予想外の


「でな二人とも、夕餉はまだ時間がかかるらしくての。 先ずは湯あみに行かんか?」

「ゆ、あみ?」

「風呂という意味ぢゃ」


ほほぉ。

じぃちゃんの言う湯あみというのの意味が分からなくて、思わず聞き返してしまえば分かりやすく教えてくれて、ほんとじぃちゃんたら俺を落とす気だ。

しゃがみ込んでわざわざ俺の目線と合わして、両手握ってくれてるところがまた良いと思います。 うん。

握られている手をぶんぶんと振りながら、こっくり頷いてみせれば「ふぉっふぉっふぉっ」なんて笑ってくれて、手を繋いだまま準備を始めた。

どうすれば良いのか分からなくて、とりあえず様子を見ていたのだがどうやら古きよきというか、昔…いや、前世の時の昔って意味でだけど、銭湯に向かうスタイルみたいだと思う。

桶に、タオルっぽい物を入れて、それと何か白い着物みたいなのを入れて準備完了ならしい。

ちなみに俺のは小太郎が既に持ってました。



行ってらっしゃいませー、なんて見送られてからちょっとした森みたいな所を下ると、どうやら河川敷だろうか。

丸い砂利がゴロゴロ転がっている場所に出た。

川の水がサワサワと流れていて、緑色の葉っぱが綺麗に反射していて凄く清らかで、幻想的とも言えるような所だと思う。

魚居るかな、なんて思いながら繋がれた手に引っ張られるままに歩いて行けば、なんだか壁が無い、屋根と柱だけのものが見えた。

どうやらそこに温泉があるみたいだ。
湯気見えるし。
じぃちゃんも「おお、屋根を建て替えたのか」って言ってるし。


「さてと、着いたぞ才蔵、風魔。 ここがワシが贔屓にしとる一押しの温泉ぢゃ!」

「………」


小太郎、俺も魚居るかなとか思ったけど今は狙わなくても良いんじゃないかな。

クイクイと着物の端を引っ張れば「ん? 何?」みたいな感じでこっち向いたから、やっぱり狙ってたのか魚。


「こたも、はいる? でしょ?」

「……」


そういえば、小太郎も入るのかなぁ。
一緒に来たから、一緒に入るんだろうなぁ。

と、内心ワクワクしながら聞いてみたのだが、返ってきたのは無言で少し焦ってしまう。


え、え? あれ?

なんて思わず小太郎とじぃちゃんの顔を行ったり来たりする俺の顔は、たぶん、ていうか絶対切羽詰まってたと思う。
あと小太郎も予想外だったんだろう。


だってじぃちゃん、凄く良い顔してたから。



[ prev / next ]
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -