■ 今が一番
隣に並んだ顔にニマニマとだらしない笑みを浮かべたまま、ずっと向き合う。
ただ子供体力の俺はふかふかの布団に、ここまで歩いてきた疲労が合わされば敵うはずもなく、だんだん目がとろんとしてきてしまった。
対する小太郎はぱかりと目が開けられたままで、眠気の欠片も見えない。
そういえば俺、小太郎の寝顔って見たことないや。
いっつも俺が先にオチるからなぁ…、…ちょっと見てみたい…。
そうとなれば実行だと、腕のリーチが足らないので少し小太郎にもぞもぞと近寄り、手を小太郎の胸辺りに置いてタムタムタムと叩く。
まぁ小太郎にいつも俺がやられてる事を真似してるだけなんだけど、俺がこれやられるとすぐ眠くなるから小太郎にも効くんじゃないかと。
…うん、全然そんな気配無いんだけど。
むしろパチパチと瞬きを繰り返してほんの少しだけ驚いたような顔をするから、どうしたのかと手の動きを止める。
でもそれ以上何のリアクションも無くて、何でもないのかなと手をまたタムタムと動かそうとすれば、むぎゅーと抱き締められた。
「ふぉおお」
おおお、どうしたんだ小太郎。
結構力強くて苦しいよ小太郎。
プハッと顔を小太郎の肩から出せば、くすぐったいくらい近くにある赤い髪の毛が見えて「あ、久しぶりかも」なんて思う。
前にこんなふうに抱き締められた時は俺が縁側みたいな所で大泣きで、その後も抱き付いたりなんだりはしたけど、こういう抱き付きはしてなかったかもしれない。
息を吸えば、小太郎の匂いがして安心する。
もちろんじぃちゃんの匂いも大好きだし安心するけど。
あーもー大好きだなぁ、と実感。
腕を全部回せなくて途中までしか届かないんだけど、背中まで腕を回して離さないようにしっかと服を握り締める。
今まで生きてきた中で、今が一番幸せだと思う。
その後、しばらくして帰ってきたじぃちゃんにバッチリ見られて苦笑された。
だからじぃちゃんも抱き締めたら、お灸とか線香みたいな高級な匂いがして、やっぱり安心した。
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