■ 伝説の忍


「それにぢゃぞ、」


握った手を小太郎も握り返してくれて、小太郎の顔を見上げへらへらと笑っていればじぃちゃんの声がまた聞こえ、目を向ける。


「役に立たん小言ばかりの者を何人も連れて行くより、頼りになる忍を一人連れて行った方が数倍安心できるわい!」


カッカッカッと笑いながら小太郎の背中を叩くじぃちゃん。
地味に小太郎痛そうだなぁ、表情に出てないけど。

ていうか、やっぱり小太郎強いんだね。


「こたろー、つよいの?」

「強いどころではないぞ、世の忍の中で一番強いのぢゃ! 伝説の異名を持つ男ぢゃぞ!」


これも北条家の栄光なんたらかんたら……、と言い出したじぃちゃんに始まっちゃったなぁなんて思う。

よくじぃちゃんはご先祖様がどんな事やってきたかとか、どれだけ偉いかとか話してくれるんだけど、最初は面白かったけど最近は子守唄に聞こえるくらいになってきた。

そろそろ俺、全部言えるようになると思う。

それにじぃちゃん自身曖昧になってるらしくて、たまに「…はて、続きは何ぢゃったかのぅ…」とか言ってるし。
聞く度に内容がちょっとずつ違うのはきっと気のせいじゃないと思います。

てか伝説ってほんと? マジで?


「こた、しゅごい」


あ、噛んだ。 ちくしょう。

あー、でもそんな強いとなると俺の“小太郎みたいな忍になる”夢のハードルが上がるな。
いや頑張るけどね!

そういえば忍って暗殺とかするんだよね。

……俺出来るかな…。
一応、夜とかは効くらしいんだよね俺の目。
それが目の色に関係してるかは分からないんだけど、とりあえず前の俺…晃樹だった頃よりは見えるし、鼻とか耳も良いっぽい。

あと気配? だっけ? そういうのも分かるみたい。
それと体の丈夫さと、運動神経とかも良いみたい。
…まぁ、たぶんこの三つはあそこに居た時に鍛えられたんだろうなぁ…。


むーん、と考え込んでいればひょいと体が持ち上がり小太郎の肩に頭を跨ぐ形で乗っけられる。

肩車ですか、小太郎さん。


「こたー?」


返事が無い、ただの小太郎のようだ、いやたしかに小太郎だけども。

ぺちぺちと顔を覗き込みながら小太郎の頬っぺたを叩いてみるが、反応は無くて。
まぁ乗ってろって事なんだろうから、景色楽しんでおこうかな。

そんなふうに思って下から見上げてるじぃちゃんに笑っていたら、木の枝に激突しました。


 

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