■ 衣類募集
「そうと決まれば早う仕度せい! 風魔! 風魔はどこぢゃ! ふうぅまぁぁああああッ!!」
じぃちゃん声でかい。
あと小太郎は後ろ、後ろに居る。
完璧に仕度終えてきた小太郎が後ろに居るよ。
耳の奥がビリビリする…。
耳を押さえてぐにぐにやってれば、小太郎がやってきて心配したみたいに頭をぽんぽんと手で軽く叩く。
大丈夫なんだぜ、俺結構丈夫だから。
そう言うようにニカッと笑って見せれば小太郎もふっと笑って、俺の脇に手を入れて抱き上げてくる。
「………」(才蔵の仕度して来ます、という目)
「うむ、頼んだぞ」
「? っ、」
抱き上げられて向きが、小太郎の向いてる方と反対だったおかげでじぃちゃんと小太郎がどんなやり取りをしてたか見えず、いきなりのGに一瞬だが息が詰まった。
ふは、と溜まった息を吐く時にはもう場所が変わり別の部屋で、毎度の事ながらびっくりする。
もうこれは移動じゃないと思う。
ワープだと思う。
そんなアホな事を考えていたらストンと畳の上に下ろされ、小太郎が何やら近くの棚? ていうか、箪笥みたいなのを漁り始めた。
何事?
「……」(あったあった)
ただ単に才蔵の着る着物を探していただけなのだが、大きさが異なる為に少し時間がかかっていたのだ。
基本才蔵の服は女中や下男、部下の者など、子供が居る家庭からお古をもらってきただけであって。
数も少なければ大きさの種類も少ない。
この時代、何かを捨てるという事など滅多に無い。
米の磨ぎ汁は洗濯に、排泄物は肥料にし肥溜めから硝石も出来る。
そんな事をしているのに、ただ着れなくなったという程度の着物など、活用のしがいが有りすぎるのだ。
和服はどんな体型の者にも使えるとは言え、さすがに縦の長さ、つまり身長に関してはどうにもならない。
その上、才蔵は発育が遅いが育ち盛り。
すぐに尺が足らなくなってしまう。
才蔵に取り出した服を着せ、帯を締めながらそんな事を考える。
だが言い方は失礼になってしまうが、まがりなりにも氏政は国主だ。
なぜ呉服屋などに作らせないのか。
才蔵の世話を率先してする女中の一人に聞かれた事がある。
なぜかと言えば、才蔵のためであった。
今はだいぶ治まっているが、以前は人見知り…というか、よく会う人物・特定の人物以外を怖がっていた節がある。
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