■ お出かけ
「仕度をせい! 二人とも! 温泉に行くぞ!」
スパァンと開け放たれた障子から入る直射日光に思いっきり眉をしかめれば、おおすまんの、と障子を閉められた。
灰になるかと思ったー…。
寝起きの俺に直射日光はキツいです。
無断木登りで怒られたのはつい昨日の事。
隣で寝てた小太郎も…、まぁ俺が起きるより前に起きてたみたいだけど、眩しいみたいで顔が険しいし。
…ていうかその顔ちょっと怖い。
あ、そうそう、なんか昨日小太郎が一緒に寝てくれました。
もうね、夜なのにテンション上がっちゃったから寝らんないよね。
小太郎も忍だからか一緒の布団で寝っ転がったのは良いけどそう簡単に眠気とか来ないらしくて、しばらく二人して寝ないからたまに目が合って「ふへへ」とか笑ってたんだけど、さすがに「寝ろ」って背中ポンポン叩かれた。
俺、これにかなり弱いんだよね。
すぐに落ちたよ、うん、すぐにね。
それでめちゃくちゃ良い眠りについてたんだけど、障子を開ける音とじぃちゃんのでかい声と初夏の日差しに叩き起こされました。
たぶん、この異様な眠気は寝不足のせいだけじゃないと思う。
うとうとして舟漕いでたら、小太郎が自分の方に引っ張って寄り掛かれるようにされて、背中を擦ってくる。
いやもうホント、大好き。
でも今やられると俺絶対寝ちゃうから止めて。
「こりゃ聞いとるのか二人とも!!」
「っ」
寝かけに大声出されたからびっくりして体がビクッてなった…!
ぷりぷり怒るじぃちゃんを小太郎が「まぁまぁ…」ってなだめてる。
ていうか、何で温泉?
そう思い、首を傾げていれば落ち着いたらしいじぃちゃんが俺の目の前でしゃがんで両手を取る。
そこには包帯でぐるぐる巻きにされ、さも重傷のような様の俺の手。
ただのかすり傷なのにね。
「温泉というのはの、温かい湯が湧いておる場所の事を言うてな。 その湯は薬にもなるのぢゃぞ」
知ってるけど、とりあえず頷いておいた。
…いや…ほら、じぃちゃん傷付くだろうし…。
それに。
「手の傷も、もしかしたら腹の傷も良くなるやも知れんしのぅ。 何より、才蔵と風魔と共に出掛けたいのぢゃ」
駄目かの?しわくちゃの顔をさらにしわくちゃにして眉を下げて笑うじぃちゃんに笑い返して、ひしっと抱き付いた。
それに、こういう事かなって思ったから。
もーじぃちゃんのそこが大好き!
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