■ どこに?


忍専用の入口から城に入り、通りすがりにだが少しだけ寄り道して氏政の待つ部屋へと向かう。

まぁ寄り道と言っても才蔵の部屋の前を通るだけなのだが。


(いた)


庭に出て、木の棒でガリガリと地面に何か書いている。

子供のする事はよく分からないが、あまり日に焼けていない白い肌の才蔵に何か日除けになる物と、暑さにやられないように後で休ませてやらないとと思いながら、通り過ぎた。


「……」

「…、おお風魔か!! どうぢゃった、様子は」


シュタリと部屋に降り立ち気配をわざと漏らせば気付いたらしく、翁がこちらを振り向く。

その言葉に報告書を取り出し渡せば、ふむふむと一人頷き、「うむ!」と大きく頷いて報告書を横に置きながらこちらを見た。


「ご苦労ぢゃった、風魔! まっこと出来の良い忍ぢゃわい。 ほれ、饅頭食うか?」

「……(ペコリ」


ありがとうございますと頭を下げ、差し出された饅頭を両手で受け取る。

それに満足したようにまた頷く翁に、なんだかこっぱずかしい気持ちになった。


「そうぢゃ風魔、才蔵の様子を見てきてはくれんか?」


まだ執が終わりそうになくてのぅ。

と肩を叩く翁を見てあとで肩を揉んであげようかと思いつつ、氏政の命にこくりと頷く。

才蔵なら先ほど見てきたばかりだが、さっきの事もあるし、何より見に行く事に抵抗など有りはしない。


急かすような気分に、自然と城の中だと言うのに速い速度で向かってしまう。

が、才蔵が見当たらない事に気付きさっきまで居たはずの場所に降り立つ。

辺りを見渡しても姿は無く、部屋の中かと思い移動して部屋の中を覗いてみるがそこにも姿は無い。


(…どこに行った?)


もう一度庭に戻って見渡すも先ほどと変わりなく、人影すら見えない。

もともとあの子は気配も薄い。
それは幼い頃の経験が成した物なのか生まれついての素質なのかは分からないが、少し練習でもすればそこらの忍ならば凌げるほどになるだろう。

まあそれは今はどうでもいい事で、どこに行ったのか分からない才蔵を探す事が優先だ。

女中なら味方は多いが、その他一部の女中と武将らにあまり評判は良いとは言えない才蔵がいつもの行動範囲を出るという事は、少々芳しくない。

まぁこの城の中で、城主である氏政に好かれているあの子供に手を出す輩はそうそう居ないとは思うが、やはり念には念を入れた方が良いだろう。


 

[ prev / next ]
×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -