■ 大告白を
「…も?」
指差された文字を読み上げればこくりと頷かれ、次の文字を指差される。
「う」
また読み上げれば次の文字を指差されて、順番に俺は読み上げていく。
「す、べ、て、よ、め、る、の、か…?」
最後まで読み上げて小太郎を見上げれば今度は深く、こっくりと頷かれた。
「よっ! よめる!」
何か胸の奥から込み上げるものがあって、思わず力んだ声でそう言えば珍しく誰にでも分かるほどに口元が緩んだ小太郎に頭をよしよしと撫でられ、一気に自然と俺も口端が上がっていった。
頬の肉が上がった所為で細まった視界に映る小太郎の赤い髪が日の光に当たってキラキラ光って、どうしようもなく明るく見えて、「俺、小太郎大好きだなぁ」と実感する。
もちろんじぃちゃんも大好きですけどね!
あー、やっぱり小太郎みたいな忍になりたいなあ。
大変だっていうのは承知で。
だってじぃちゃんとか守りたいし、小太郎の手伝いとか凄くしたい。
…役に立てるかは別として。
教えてくれるかは分からないけど、言うだけ言ってみようか。
キュッと顔を引き締めてさっきまでとは逆に小太郎の顔を見上げれば、それに気付いた小太郎が俺を見下ろして首を傾げてくる。
「おっ、おれねっ、あのねっ」
加減出来ず握り締めた紙が、くしゃりと音を立てた。
「おとなになったら、こたろーみたいなかっこいーしのびになる!」
小太郎の動きが、完全にピタリと止まる。
「が…がんばる、よっ!」
ピシリと固まった小太郎の表情が少しも変わらなくて、俺は何か反応が欲しくてなおも意気込んだ。
手のひらをぎゅっと握り締め、口を強く結んで小太郎をじっと見つめ続けていれば、少し開いていた小太郎の口が閉じて、また腹に慣れた腕の感触。
キュンッと風が鳴った音がして、よっこいせと抱え直されたと同時に目を開ければ、あの木から見た景色よりずっと高く見晴らしの良い景色が広がっていた。
小太郎の方から下を覗き込めばどうやらここはいわゆる天守閣とやらのてっぺんのようで。
「おぉー!」
見えなかった城の全体や城下町も完全に見渡せて、テンションはもうMAXです。
おまけに片腕に座らせるように抱き上げられてるから小太郎の頭にしがみついてて、おかげさまで密着度もMAXです。
サービスなんですねそうなんですね。
なんだかはぐらかされたというか、濁されたような気がするんだけど、まぁ…小太郎大好きだから許す!
気持ち悪いぐらいににやけながら、力の限り小太郎に抱き付いた。
いつか忍になるの認めさせてやるからなー。
……ちなみに木登りの件はきっちりじぃちゃんに報告されて、こってり絞られました。
亀の甲より年の功と思っちゃったのは内緒です。
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