■ 初怒られ

そのままぎゅっと両手で俺の手を握られ、目合わせるためにしゃがんでじぃ…っと顔を覗き込まれて、思わず首を後ろに引っ込めてしまう。

……完っ璧に怒られてますよね。
俺。

こう…デパートとかで迷子になった子供が迷子センターとか交番で保護されて、親が迎えに来た的な雰囲気っていうか、そんな空気がスッゴいする。

要は、超恐い!


「っご…、ごめんな、さい」


あわわわと全身に冷や汗をかきながらそう言えば、少し雰囲気が緩くなって、どこから出したのか濡れた手拭いで手のひらを拭かれ、それを裏返して今度は顔をグイグイと拭かれる。

なんだかそうされるのが久しぶりで懐かしいなーなんて思いながら、それと同時に初めて小太郎に怒られたんだと気付いた。

…わー、マジで俺、小太郎の事間違えて「父さん」って呼びそうな気が凄くする。

そんな馬鹿な事を考えているうちに拭き終わったらしく、手拭いはどこかに消えて、小太郎は俺を見ながらうんうんと頷く。

どうやらキレイになったらしい。


なんだか顔がすーすーするなぁなんて思っていれば、またじっと小太郎がこちらを見ているのに気付く。

首を傾げて俺も見つめてくる目を見つめ返せばさっきまで俺が居たはずの木と俺を交互に見ていて。

なんとなくだが、小太郎が何を言いたいのか分かった。
たぶん、何で木に登ったのかと聞いてるんだと思う、この目は。


「ぁ、あのねっ」


急いで懐にしまったあの五十音表を取り出し、小太郎の目の前に突き出す。


「これ、とんでっちゃって」


わたわたと木を指差すと小太郎も木の方を見て、「ああ…」みたいな何か納得するような顔をしたから、伝わったんだと思う。 …たぶん!

というかあんまり表情が変わらない小太郎の表情の変化とかが分かっちゃう俺って、世界中で小太郎の事をよく見てるんだって自惚れても良いですか。


そんな事を考えていたものだから思わず「ふへへ」というような変な笑い方をしてしまい、小太郎に不思議そうな目で見られ、慌てて元の顔に戻す。

相変わらず不思議そうな目で見ていた小太郎だが、ふと思い出したように人差し指で「来い来い」と俺を呼び、言われた通り近付けば持っていた五十音表を広げて一つの文字を指差してきた。 

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