■ 見切った
風魔さんだ。
忍だから痕跡か何かを残さないようにしているのだが、逆にそれが人によって違っていて。
他の忍さんは消し方が似ている人達が何人も居て、そして似ている消し方も同じパターンが何個かある。
言ってみれば教室の中にあるグループと言うかなんと言うか…。
よく女子にある大人しめグループとギャル系グループ、男子っぽいグループのような別れ方だ。
たぶん、ああいうのを忍の里の違いって言うんだろうなぁ。
教わる忍術の流派とか、違うってテレビで見た気がする。
その中で唯一風魔さんだけ違くて、しかもそれが独特で、他の忍さんより精度が高いからすぐ分かる。
ようは、一番気配が薄い人が風魔さん。
ふふふ、見抜いたぜ、風魔さん!
そうやって一人でひとしきりニマニマした後、さあ続きをやろうと元の方向を向き直せばある違和感に気付く。
じぃちゃんが書いてくれた五十音表が、無い。
「うぇえ!?」
情けない声を出したのは許して欲しい、本気で驚いたんです。
辺りをキョロキョロと見回すが見当たらない。
どうしようとアワアワしていれば、視界にフと白い物が映ってそちらの方を勢いよく向けば、ひらりひらりとその紙が舞っている。
どうやら、先ほどの風で吹き飛ばされていたらしい。
良かった良かったと小走りでその紙を追いかける。
だが一向に紙は落ちてこず、風に吹かれどんどん流されていく。
(え、何コレいじめ?)
ジャンプしても届かない、絶妙な高さ。
いい加減、首が疲れた。
そんな事を思い首を一度元の位置に戻せばその瞬間、またぶわりと風が吹き、一気に上昇し流され、高い木の枝へと引っかかる。
「…いじめ?」
本気で。
ああぁ…、とがっくりと肩を落としてうなだれる。
大人でも届かないような高い位置の枝な上に、よじ登ろうにも二メートル近くは枝は無い。
かろうじて、多少のデコボコがあるだけだ。
「まじで、しゃいあく」
マジで最悪。 噛むし!
カッコ悪い独り言を呟きながら上を見上げ、途方に暮れる。
誰かに言えば、取ってくれるだろうか。
でもよくしてくれる女中さん達も来る気配は無いし、あの医者っぽい人は五日おきに来るけど今日は来ない日だし。
忍さんに頼めばすぐに取ってくれそうだけど、こんな事で呼ばれるのも迷惑だろうし。
他の人を探しに行こうかとも思ったが、それは早々に諦めた。
[
prev /
next ]