■ ヤバい事


俺がじーっと紙を見ていると、じぃちゃんは「風魔、紙はないか」と言って風魔さんに紙を持ってきて貰い、俺が見ていた紙を退かしてその新しい紙を置く。


「これが“あ”ぢゃ」


俺に習字とかで名前を書く時に使うような小筆を渡し、自分は少しそれより太い筆でスラスラと書いて見せてくる。

そして「どれ、才蔵も書いてみぃ」と俺を膝の上に乗せた。

おお、座高たけー! ナイスポジ。

膝の上に乗ると更に紙が見やすくなって、書きやすい。


「んしょ」


そこから身を乗り出して、利き手じゃない方で紙を押さえ、じぃちゃんの書いた隣に真似して書く。

言っちゃなんだけど、ぶっちゃけ“あ”に見えねぇ。

確かに面影はあるんだけど、言われなきゃ分かんない。

次にじぃちゃんが“い”を書いてくれて、またそれを真似して書く。


「ほぉ、上手いもんぢゃのう才蔵。 賢いのぉ」


自分的には下手くそだと思うし、お世辞だと思うんだけど、じぃちゃんに褒められて悪い気はしない。

頭を上げてニヘラと頭の上にあるじぃちゃんに向かって笑えば、じぃちゃんもニヘラと笑ってくれる。

いや〜、じぃちゃん絶対孫が出来たらじじバカになるね!

そんな風にじぃちゃんとイチャついていれば、視界の端に風魔さんが写る。

そういえばさっきから風魔さん気配消してたかも。

風魔さんの方にもニヘラと笑顔を向ければ、少し驚いた雰囲気をして、次に柔らかい雰囲気になって口が少しだけ緩んだ。

そしてなでなでと頭を撫でてくれる。

風魔さんも子供が出来たら親バカになると思います。


テンションうなぎ登りだった俺は、紙に自分の名前を書いてみる。

あ、ちなみ晃樹じゃなくて、才蔵の方。

ちょっと崩れたけど、なかなか上手く書けたと思う。


書き終わった途端、じぃちゃんと風魔さんの動きがピシッと固まった気がした。


それに気付いた俺はコテリと首を傾げる。

あ、勝手に頭ん中で“さいぞう”を“才蔵”って変換してたから、字を間違ったのかも。


「じ、まちが、った?」

「いや…いや、そういう訳ではなくてだな。 …才蔵、字が書けるのか?」

「? ひらがなよく分かんないけど、たぶんかんじ、かける」


…と、思う。 うん。

だってこの時代だし、俺の時代の漢字とだいぶ違ってるだろうし。

ん? この時代…?


「あ」


ヤバい事した、俺! やっちゃった!


 

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