■ 嫌いなら


ちょっとテンションが上がるものの、ある事に気付く。

説明する内容だ。

恥ずかしい云々を抜きにしても、困る事がある。


さっき泣いてしまった理由、それは小太郎やじぃちゃんと離れたくないという物だったが、今思えば自分の我が儘以外のなにものでもない訳で。

たとえここに居る事が許されたとしても、嫌われていたのであれば意味は無い訳で。

あの時のように、嫌われていては。


嫌悪のこもった目で見られて、罵声を浴びせられて、見たくもないだろうにそれでもそこに自分が存在し続けるという事は、相手にとってかなりの大迷惑ではないだろうか。

そんな中に居ても、きっと自分自身辛いだけだと思う。


こんな見た目をしているから、周りに迷惑が掛かるんだ。

じぃちゃんも、本当は気持ち悪かったんじゃないだろうか。

あの医者の人も、触りたくもなかったんじゃないだろうか。

風魔さんも、こんな普通じゃない子供の世話なんて面倒な事をしたくなかったんじゃないだろうか。

女中さん達も良くしてくれたけど、俺が居る事で迷惑がかかったんじゃないだろうか。


俺がそこに居るだけで迷惑が掛かるのは嫌なんだ。

少なくとも俺はここの人達が好きだから、その人達が嫌な思いをするのであれば俺は居なくなる事を選ぶ。

俺が好きでも嫌いなら仕方ないんだ、やっぱり。

俺がどうこう出来る問題ではないんだ。


せめて好きな人達が幸せであるように。


「おれがきらいなら、ゆっていーからね」


告げられた言葉に、こてりと小太郎は首を傾げる。

嫌いとはどういう事だ?


「おれだいじょーぶだからね? ひとりでもへーきだからね? がんばるから、もー、ほかのひとにみつからないよに、かくれてるから」

「?」

「だからね、きらいなら、ゆっていーよ。 へーきだからだいじょぶ。 いらないなら、すててもいーからね」

「っ」


その言葉に、息が詰まる。

“要らないなら捨ててもいい”

まさかそんな事を言われるとは思っていなかったし、何より、この子供が捨てられた事を自覚しているのに驚いた。

この年頃の子供は、多少常識などが付いてきたにせよ自我が強い物ではないだろうか。

それに対してこの子供は自我が少な過ぎる気がする。

何をするにも謙虚に、遠慮がちに。
大人しいで済ませられれば良いが、子供らしいと聞かれればらしくないだろう。


 

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