■ 誓います



ゆっくり立ち上がり、ゴシゴシと目を拭う。


にへらと笑ってみるが、駄目で、すぐ口がへの字に曲がってしまった。

眉も八の字に寄ってしまう。


嫌だ。


「ふ……まっ」


自分の胸の辺りの服を掴む。

なんだか喉が詰まってしまいそうだ。


「ふー、…まっ」


一歩踏み出してみる。

頼むからもつれるなよ。


「ふー、ま…っ」


前が涙でぐにゃぐにゃしてて見えない、今前に居る?

両手を前に出して、探るみたく進んでみる。


「ふ、ま」


お願いだからさ、居るよね、前に。

やっぱり離れたくないっす。


「ふーまっ!」



語尾が上がったのは俺が強調して言った所為でもあるんだけど、ぶっちゃけ持ち上げられた事に対しての驚きが高いです。


まばたきで涙が零れて少し視界が開けた先には、赤い髪が揺れていた。

顔は見えない、前髪でじゃなくて、横にあるから。

まあいわゆる、ハグですな。


ぎゅうっと体に巻き付いている腕の力が強くなって、もっと密着する。

赤い髪にこの匂い、よく嗅ぐけどほとんど匂いがしない、この匂い。

風魔さん。


俺もぎゅうっと抱きしめ返す。

風魔さん体大きいから首にしか回せないんだけど、それでも腕を精一杯伸ばして密着する。


離れたくないです風魔さん、じぃちゃんとも離れたくないです。

まだ一緒に居たいんでお願いしますよ。

何でもするよ、言う事聞く、贅沢言わない。


ふいに体が離れて、真正面に向き直され指の腹で涙を拭かれた。

ああ男がそんな簡単に泣くもんじゃありませんね、すいません。


拭かれた後にまた抱き寄せられ、今度はトントンとリズミカルに背中を叩かれた。

ちょっと風魔さん、それやられると眠く…。


明らかに子供スキルの上がった晃樹が子守スキルの上がった小太郎に勝てるはずもなく、すぐに目がトロンとしてきて寝てしまった。


 

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