■ 嫌われる
嫌われる理由は身をもって知っていたはずだ。
(どうしようかな…)
せっかく練習したんだけれど。
せっかく好きになったんだけれど。
しょうがない。
あれ? でも俺どうなんの?
あの村に帰されんの?
…ちょっとそれは本気で勘弁…。
生みの親とはいえ、勘弁して頂きたいと言いますか…。
そういや大丈夫かねあの村、だいぶ皆痩せてたし、食い物もほとんど無かったはずだから全滅してないといいんだけど。
全滅してたら…う〜ん…南無?
とりあえず手を合わせておこうと手を合わせた不謹慎な晃樹の耳に、キシキシと床がなる音がする。
女中さんほど軽くないし、家来さんほどどすどす歩いてない。
忍さんは足音立てないし、でもなんか鳴らしてる感じ…?
あ、後ろからも小走りのバタバタしたのが。
これはじぃちゃんだ。
って事はこの足音、風魔さん?
バッとその方向を向けば、やはりその音は晃樹の居る所から30mほど離れた廊下の角から聞こえてくる。
晃樹はじっとその角を睨み付けるように見つめ、集中した。
音が段々近付いてきて、その人物の足が見える。
次の瞬間には体全体丸ごと見えて、やはりそれは予想していた小太郎で、思わず晃樹は走り出していた。
走り出したつもりだった。
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