■ 困ります
「……………」
布団に寝ていながら、テキパキと片付けをしている小太郎を恨めしげに見ている晃樹に気付いているのかいないのか。
小太郎は先ほどの事などなかったように、本当にテキパキと晃樹の身の回りを片付けている。
最後のゴミを片付けてうん、と一人頷いている姿はなんだか可愛らしいのだが。
一方、晃樹は大ダメージを受けていた。
もう男の尊厳だなんだを言えるレベルではない。
「男の尊厳? 何ソレ、おいしいの?」なんてレベルになっている。
むしろ本当にお嫁に行けない時態に進行中だ。
(え、何。 神様俺の事嫌い?)
なんかこの世界に生まれてから良い事ない気がする。
あ、でも伝説の忍に会えたわ。
って違くて、風魔さんの事は置いといて。
あ、駄目だ置いとけない。
関係あるもん風魔さんに。
風魔さん、どうしてくれるんですか。
俺ファーストキスまだだったんですけど、この世界生まれて初めてだったんですけど!
ていうか俺、死ぬ前もまだだったわ。
そりゃ女じゃないから「ファーストキスとられた〜」とか騒がないけどさ、それはあくまで異性だった場合な訳で。
同性ってどうよ?
気にして良いよね、俺。
落ち込んで良いよね、俺。
風魔さん、あなた二人分の初めてとっちゃいましたよ。
…なんか誤解ありそうな台詞だけど、マジでホントに。
本気と書いてマジと読む。
気付けば風魔さんはもう居なく、一人にしては広い部屋で寝返りを打つ。
軽くゴシゴシと唇を拭うが、感触がガッツリ残っていてどうにもスッキリしない。
結構過激だったな…、と思った所でハッとなり、頭をブンブンと振った。
何を考えているんだ俺は。
まるで思春期のように…実際に思春期だが、もんもんとした頭の中をどうにかしたくて、枕をバシバシと手の平で叩く。
しまいには叩くだけでは治まらなくて、枕を思い切り投げてみるが遠くに飛ばずすぐそばでボトリと落ちるし、ビキッと腹の傷が引きつって声に出ない叫び声を上げた。
「――〜〜ッ!!」
腹を押さえ折り畳み式携帯のように布団に突っ伏していると、襖が開かれ、あのお医者さんっぽい人が入って来る。
俺の状況を見て「動くんじゃない」と布団に寝かせて、掛け布団も掛けてくれた。
「薬、もうちょっと細かくするからな」と笑いを噛み殺した上での苦笑いに、俺は本気で死にたくなった。
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