■ 口移しで
晃樹は何か気付いた様子の小太郎を、ただただ見守る。
どこから出したのか、新しい薬を取り出した小太郎は、それを残っていた白湯と共に自らの口の中へと流し入れた。
あれ? 風魔さんが飲むの?
なんて少し驚いていた晃樹の方を向き、くいっと顎を掴んで顔を合わせる。
今日の小太郎は兜を被っておらず、赤い前髪で分厚く覆っていた両目もサラリと揺れて見える。
「いやぁ、やっぱりこの人イケメンだな〜」などと軽く思っていた晃樹だったが、ここでやっと異変に気付いた。
どんどん小太郎の顔が近付いて来ている。
え?
ああ、口移しで薬を飲ませようとしてるんですね。
だからあの薬、自分の口ん中入れたんですね。
………。
……誰か助けて!!
「……ッ…!!? …!! …! ……!!」
「……」
「っ」
無音の攻防戦を繰り広げる二人。
頭を小刻みに振り、断固拒否の姿勢を取るのだが更に強い力で上を向かされ、ガッチリと目が合う。
目が合ってしまってはどうする事も出来ず、ビクッと体が跳ねた後硬直してしまい、動けなくなる。
そうすると目を逸らすしか出来なくなるのだが、逸らした所で何も変わらず事態は進行するのみ。
だんだん自分の顔が赤くなっているのではないかと気が気でない。
男に顔近付けられて赤面とか……冗談でも笑えないって…。
…本っ当に、誰か助けて下さい…切実に。
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