■ 喉の弱さ
あああ、もうヤケだ。
「……っ」
ぱくっ
目を瞑り、さじに乗った湯気の立つ粥に齧りつく。
口に入った粥の味は温かく、ほんのり甘い。
塩気も微妙に効いていてはっきり言ってものっそい美味い。
ていうか、米を食べるのが凄い久しぶり過ぎる。
やべえ、美味いし、懐かしいし、泣きそう。
子供になると涙腺が緩むのか、泣きそうになるのを必死にこらえながらむぐむぐと粥を飲み下す。
また口を開ければ新しい粥が口に運ばれ、それを咀嚼するとまた新しい粥が運ばれる。
まるで親鳥と雛の餌やりのような光景だ。
時折口からこぼれた粥を指で拭われたりしながらそんな事を繰り返し、もっと粥が欲しいと思う頃にはもう無くなっていた。
ふー…と息を吐き、水を飲む。
そうしている間に一瞬でお椀などを片付け、もう薬の準備をしている風魔さんとかマジすげぇ。
どうやったらそんな速く動けるんですか。
本当に憧れるわ忍。
布団の上で白湯の入った湯飲みを持ち、こちらを見ながら目を細める子供に「年寄りか」などと思いつつ、和んでいた小太郎は準備できた薬と新しい白湯を持ち晃樹に近付いた。
それにハッと気付いたのか赤い瞳が開かれ、丸い瞳がこちらにしっかりと向けられる。
クイクイと上を指す小太郎に、晃樹は薬を飲むのか〜とすぐに上を向く。
上を向いた晃樹の開いた口に白湯を流し込み、薬を入れた後だった。
「ッゴホ!! ゲホッゲホ!」
「!!?」
晃樹が薬を飲もうと喉を動かした瞬間、盛大に咽せ返る。
現代ならば水に溶ける薬だが、今、この時代ではそんな便利な物ではない。
所々茎が残っているし、粉と言っても葉っぱだ。
現代人の晃樹にはキツいものがある。
現代人だけではなく、喉の弱っている今の状態ではとてもキツい。
粥ならほぼ流動食に近いが、この薬はある意味固形に近い状態。
一度湿らせれば楽にはなるのかもしれない。
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