■ 憧れの瞳



ガバリと勢いよく起き上がれば、赤い人は一瞬にして1m程退がり、俺は腹が痛んで前のめりに布団に突っ伏した。


ぬおおぉぉぉお…っ!
何か…、傷がピキッて言ったコレ…ッ…!!


あまりの痛みにしばらく悶絶していたら、背中をさすられた。

顔を上げれば、あの赤い人。

この人めちゃくちゃ優しい。


痛みがある程度治まってきた頃、ドタドタと誰かが向かって来る音がする。

その途端、シュタッと赤い人が居なくなり、変な兜を被って再登場してきた。

服も変わってる。

え? 何? 趣味なの?

そんなどうでもいい事を考えている俺を引き戻すかのように、日の光が透けていた障子が開かれ、直接日光が部屋に入って来た。


逆光でよく見えない。



「おぉ風魔! 童が目を覚ましたと聞いての、飛んで来たのぢゃ!!」



逆光の中に立つ人物は、どうやら老人のようだ。

童って…俺の事だよね、てか、へ? 風魔? 風魔って言いましたこの方。

風魔ってアレでしょ、忍でしょ?

猿飛佐助とかああいう伝説のさ…、マジで?

そう思いながら横に座っている赤い人、もとい風魔を見つめる晃樹の目は、憧れの色に染まっていた。

小太郎は小太郎で子供にこんな風に見られた事などあるはずもなく、どことなく気恥ずかしい気持ちにソワソワとする。

そんな二人を眺める氏政は明らかに孫を見る目だったと、晃樹の包帯を変えに来た薬師は言ったそうだ。


 

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