■ 思うこと




朝日の中、褥の中で眠る子供の顔を眺める。


少々青白い顔色だが、城に着いた時に比べれば断然良いだろう。

城に着いた頃は、本当に駄目かと思った。

だが翁の順応性の早さや、薬師、忍が使う薬などを総動員で治療し、一命は取り留めた。


…その後の「あとは自分がやる」と己が言った瞬間の、翁のニヤニヤとした顔が少々気になったが。


少し伸びた子供の黒髪に、手を伸ばす。

が、はたして自分が触って良いのかと悩み、手を伸ばしては引っ込め、伸ばしては引っ込め…と繰り返しているうちに、ヤケになって端っこを思い切って触ってみた。


サラサラとしていて、柔らかい。

上から下まで撫でれば、スルリと一度も引っ掛かる事は無かった。


その感触を楽しんで触っているうちに、子供の目からポロリと何かが零れる。

何だ何だと思い、すくい上げて舐めてみれば、しょっぱい。

涙だ、と気付いた時には、子供の目は少しだけ開かれて辺りをさまよってから、自分の方を向いた。


その赤い瞳と目が合った途端、ドクリと心の蔵が跳ねる。

そしてこう“思った”のだ。




(忍の掟なんかくそくらえ)




 

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