■ 思うこと
そんな思いがチラついて、背中に背負った忍者刀の柄を掴む。
が、翁の許しは無いし、今自分は仕事で命令されていない。
勝手な行動は仕事での信用を下げる。
ひとまず村は捨て置き、血の臭いの元へと急いだ。
さっきよりも臭いが、濃い。
荒れた野の中に、“ソレ”は居た。
麻布に巻かれ、息も絶え絶えでそこに居る。
見たところ、普通の子供と何ら変わりは無い。
ただ妙な事に、出血量からしてそろそろ死んでもいい頃なのに死んでいない。
苦しいだけなら、いっそ殺してやった方が楽かもしれない。
そう思い…、…いや忍が“思う”は無いのだ。
そう、無いから、この子供を何の感慨無く殺せるはず。
今思えば、自分自身を試していたのだろう。
武器を持ち、近くへ降り立ち、近付いた。
晒されている喉を斬れば、と子供の顔を伺った時だった。
苦しさにギュッと瞑られていた瞳が、うっすらと開かれたのだ。
その瞳の色を見た途端、動き所か息までも止めてしまう。
赤い、血のように。
黒の間から光る赤の目は、薄暗い闇の中で異質であった。
が、同時に、酷く惹かれた。
自分と同じ、嫌われる色を持つ子供。
村人の言っていた“化け物”の意味が、ようやく分かった気がした。
赤い瞳は自分を捉えて、しばらく見詰めた後、いよいよ迎えが来たとでも言うように閉じられる。
気付けば、その子供を抱え城に向かい走り出していた。
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