■ 刺される
※ 流血注意
「あ゙あ゙ぁあ゙あぁっ!!」
足に力が入らなくて、その場に崩れる。
痛い。
何コレ。
お腹、痛い。
ハッハッと犬のように浅い息を繰り返して、痛む腹を押さえる手は生温かい何かに覆われる。
鼻につく、生臭い臭い。
手に当たる感触は、小さな水流に手を当てているようで。
けれど水にしては生ぬるくて。
視線を向ければ、赤。
「どっどうする…ッ?」
そう慌てながら言う声は誰のだったか。
村の人達と、全然会話した事無いから分かんないや。
父親に似てる気もするけど。
「これでなんとか…」
地面に倒れている俺に被せられたのは大きな布のような物で、それを乱雑に身体に巻き付けられた。
巻き付ける時にひっくり返されて、近くに居た女の人と目が合う。
その人と目が合うと、一瞬で視界が衝撃でブレた。
「見るんじゃないよ! こんなのが私から、生まれたなんて…ッ…冗談じゃない!!」
ガツリと頭を蹴飛ばされ、腹から逆流してきた血が口から垂れた。
あぁ、お母さんだったのか…そういうふうな顔してたんですね。
ずっと顔見てなかったから分かんなかったよ。
そして完全に巻かれると、担架のように運ばれる。
体が曲がって振動が傷に響くんですけど。
しばらく運ばれて、せーのと言う声がした後に地面に落下した。
正直言ってかなり痛い。
どうやらその拍子で布がズレたらしく、少しだけ外がどんな所か見えた。
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