上一、The Endの続き
3万打リクエストその1
匿名希望様からEncounterの連作の続き



















『残骸』を巡って起こった事件は、それ自体の破壊によって終結した。
一方通行は粉々に砕け散った『樹系図の設計者』を踏みつけて結標のもとから去る。まだやるべきことは残っているし、こんな所に長居をする理由もない。

すると、誰もいないはずの路地裏から人の走る音が聞こえた。

(増援ッ…―――!?)
とっさに建物の陰に隠れて、走ってくる人影を凝視する。そこにいたのは、1万回以上虐殺し続けた少女達のお姉様。そして、無能力者でありながら唯一自分を負かした少年。一方通行が最も会いたくない2人が同時に現れた。結標や細かいく砕けた機械に駆け寄っていったところから察するに、何らかの形で今回の一件に関わっているらしい。
(だとしても、だ。俺はアイツらに会う訳にはいかねェ)
黙ってこの場を去ろうと美琴や上条に背中を向けるて、杖を握り締めた。でもほんの少しだけ気になって、振り返ってしまう。そこに見えたのは、かつて勘違いで自分を助けたときと同じような頼もしい表情。しばらく見入ってしまったが、一方通行が視線を送ったところで上条が気付くはずはないと知っている。見つからないように隠れているのだから当然だ。

(上条にとっては、俺と会わない方が幸せなンだろォなァ…)

何かが痛んだ。もう既にひび割れて壊れかけたものだが、まだ消えてくれないもの。どうしたって消せなかったそれが、今になって鈍い痛みを与えてくる。
(乙女か、馬鹿馬鹿しい)
今度こそ一方通行は音も立てずにこの場を離れて灯りもない暗い夜の道を歩く。上条が何かを守ろうとしているように、一方通行にだって止めなければいけないことがある。その為に汚い欲望が渦巻いた場所へ飛び込むことになっても構わない。かつて、自分の手を引いて全力疾走した少年と同じことができるとは思わないが、真似事ができるなら。かつて、怯えもせずに無邪気な笑顔を向けてくれた少女と同じ場所にいれるとは思わないが、それを守れるなら。


自分自身の想いを殺すことで、相手に平和が訪れるのなら。


一方通行は電極のスイッチを切り替えてビルの屋上まで跳躍した。そこから見下ろす上条は結標を担いで、美琴とどこかへと歩いていた。馬鹿だと思う。どうして加害者側の人間まで助けようとするのかが一方通行には今でも理解できない。
しかし、その光景を見ていると無意識のうちに笑みが溢れた。
(…ったく、本当にお節介なンでよ、テメェは。…でも、)
誰にも聞こえないように好きだと付け足して、白い影は闇の中に消えた。




20120405THU


「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -